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魔神探偵
【推理 推理小説】

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魔神探偵〜過去・回想編〜-2

 第一発見者<相模徳夫・23歳。過去に傷害事件を起こし、彰蔵さんに捕まっている>。その事実は、先ほど幸子さんに教えてもらった。確かな確証が……出来た。
 家の前に着いた時、舞奈さんはアパートの階段を上がろうとしていた所だった。
「舞奈さん……」
 後ろから声を掛けたのだが、えらく驚いていた。ザッと駆け寄り腕を掴む。
「ダメです……これ以上は……」
「黙りなさい」
 俺の手を振り払い、冷たい瞳で階段を上り始める。しかも早足だ。疲れた体に鞭を打ち、全力で走るが、早足にすら付いて行かれない。そんな事をしている間に、舞奈さんは……呼び鈴を鳴らしてしまった。


「はい?」
「巳城舞奈です。アナタを捕まえに来ました」
 ヤバイ…なんとかしなければ…。
「私を……ですか?」
「ええ。アナタは父を刺した。だから捕まえに来たんです」
 少し苦笑いを浮かべた徳夫は、舞奈さんを見ていやらしくニヤリと笑う。
「なかなか……いい体をお持ちのようで…」
 刹那、徳夫は舞奈さんの口を塞ぎ、自分の家の中へ入ってしまった。このアパートはあまりキレイではなく、家賃が安いだけのところだった。人は……徳夫しか住んでおらず、辺りには店どころか家さえもない。俺は必死でドアへと走った。
「開けろ!舞奈さんを返せ!」
ドンドンと扉を叩きながら叫んだ。腹の底から、心と共に。
「まだ一人いたのか……。絶対にヤダね。コイツはあの探偵の娘だ。イヤとゆうほど犯してやる」
 ビリビリとゆう音が俺の耳に届く。
「イヤぁ……やめて……」
「っせぇ!黙れ!」
 おそらく頬を叩かれたのか、パンとゆう音が響く。
「ちっきしょう!」
 ドアを何度も攻撃した。こんなぼろいアパートのくせに、ドアは非常に頑丈だった。
「やめろー!」
 何度も、何度も蹴った。体当たりもした。
(なんで壊れない…)
「諦めろよ若いの。コイツは……俺が堪能してやる」
「いやぁーーー!」
 その時、俺の中で何かが……弾けた。
「ふざけんなー!」
 全身の力を込め、ドアを殴った。今まで開かなかった重い扉は、簡単に倒れ、哀れな舞奈さんと、額を汗で滲ませた犯人がいた。俺は迷わず、そいつを殴った。力なんかもうないはずなのに、驚いた事にそいつは部屋の端まで吹っ飛んだ。


 怖くて怖くて仕方がなかった。こんな男に、何故『初めて』を捧げなければいけないのだろう……本気でそう思った。恐怖のあまり、時間が止まって見える。私の叫び声がやけに耳を刺した。
《ドカン……》
期待はしてた。だけど、本当にその期待を……彼は裏切らなかった。
「シネ…」
 小さかったが、犯人を殴った時にそう呟いた。私はその時気付いた。彼の眼が……緋色だった事に……。血の様に赤く、その姿はいつもの彼ではなかった。『鬼』とゆう言葉が……適切かもしれない。
「舐めるな…」
 犯人は自分の右手を私たちに翳す。どこから取り出したのかは知らないが、銃が握られていた。
「ワル…サー…」
「分かるのかお嬢さん?流出品だ。パチじゃないんだ。あなどるなよ…」
犯人は私たちの後ろの壁に向かって発砲した。本物であるとゆう事を指し示す一発だった。
「それがなんだ……」
いけない……そう思った時には遅く、彼は犯人めがけて突撃を開始していた。
「バカめ!」
 迷わずに引き金を引いた。しかし、彼はそれを軽々と避け、左手で銃を退くと、犯人の懐へと進入する。
「屑衡」
 そう言って、己の右手で相手の左足を……自分の方へと引き寄せつつも払った。
「旋勁」
 払う事で、相手の背中が彼の前にくる。彼は躊躇せず、その言葉と共に相手の背中を押した。
「ガっ……」
 犯人は吹き飛び、窓ガラスを突き破り、外へと放りだされた。その時に初めて気が付く。サイレンの音が木霊している事に……。でも、私が意識を保てたのはそこまでだった……。



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