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魔神探偵
【推理 推理小説】

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魔神探偵〜過去・回想編〜-1

 真神一家は幸せだった。なんの変哲もないサラリーマンの父『政人』、主婦の母『弥生』、そして長男の誓司に長女の美姫。父も母も人当たりがよく、物事を相談されたりすることが多く、近所付き合いも悪くなかった。父はサラリーマンだったが、趣味で絵を書いたり、ギターを弾いてみたり、スポーツ・読書など多彩な趣味を持ち合わせていた。誓司はそんな父の背中を見て育ち、父に憧れていた。しかし、悲劇は突然に襲いかかる。父と母の死……それは誓司の中に深い傷を負わせた。美姫も論外ではなく、精神に異常をきたしてしまったのだ。
 DID。解離性同一性障害。彼女はその日から、多重人格者になった。それでも、父の深い意味での知り合いだった『巳城彰蔵』は彼らを引き取った。探偵だった彰蔵と政人の関係は、探偵と情報屋だった。政人は、情報の引き出しに失敗して殺されたのを知っていた彰蔵は二人を引き取った。
 彰蔵には一人だけ娘がいた。名は舞奈。舞奈は二人を実の妹と弟のように可愛がる。誓司には父からの知恵を、美姫には礼儀や女性らしさを教えた。そして、誓司が十八、美姫が十六になった時、事件は起きた……。


「お父さんが……」
俺が学校から帰ってから約30分後、舞奈さんは、受話器を片手に落胆した。母である幸子さんからの電話のはずだが、何かあったのだろうか……。
「舞奈さん?」
「……」
俺に見向きもせず、ただ受話器を握りしめたままだ。そして「行くわよ…」と一言言うと美姫を呼び、俺と美姫は手を引かれて外に連れ出された。舞奈さんが向かった場所は、病院だった。
 俺たち二人の手を引いたまま、手術室の近くまで走ると、そこには幸子さんが祈るように手を組んで座っていた。
「あなたたち……」
即座に三人を見た幸子さんは、俺たちに駆け寄る。涙を流していたのだろう。
「お父さんは?」
「まだ手術室から出てこないわ…」
お父さん……手術室……考えたくもないモノが脳裏をよぎる。
「彰蔵さんに…何かあったの?」
誰も俺の言葉に返事をしてくれない。それでも、真実を教えてくれたのは幸子さんだった。
「襲われたの……誰かは知らないけどね。刃物で何回も……」
頬を涙が流れる。美姫も舞奈さんも泣いている。俺は、その場に立ち尽くす事しかできなかった。
 その日の夜、舞奈さんは黙って一人で家を出た。気付いたのは次の日の朝。書き置きなどはなかったが、何をしようとしているかは目に見えていた。
 俺は急いで支度を済ませると家を出た。舞奈さんが俺に教えてくれた基礎。それは聞き込みだった。俺は町中を走り回り、舞奈さんが聞き込みをしていないかを見て回った。けれど……舞奈さんはどこにもいなかった。朝八時に家を出て、もう既に四時になろうかとゆうところで、諦めかけた。
「あの人なら……」
そう、いつもの舞奈さんなら少なからず聞き込みをするだろう。しかし、直情的な彼女が、こうゆう時にすること……それは……。
「犯人を……捕まえに!?」
それでも、はやる自分の気持ちを抑え、ある人の言葉を思い出す。警察の人が話していた事……。警察の人と幸子さんの会話を盗み聞きして得た情報を整理する。
「まず、夜中に見た目撃者の証言が青い服に青い帽子。カッター。そして、警察側からは金品が盗まれていないとゆう点」
 明らかにおかしな点はいくつかある。青い〜は別としてカッターの件。人が通らないような真夜中で、いくら街灯がついていたとしても、見分けるのは困難だ。むしろナイフの方がそれに合っているだろう。そして、金品が盗まれていない=計画性があり、恨みを持った者の犯行である可能性が有力だろう。
 俺は携帯を開くと幸子さんに連絡を入れ、巧く第一発見者の名前と住所を教えてもらうことに成功した。犯人は第一発見者……俺はそう読んだから……。



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