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異界幻想
【ファンタジー 官能小説】

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異界幻想ゼヴ・エザカール-2

「こいつはもう気づいてる。隠し立てしたって、俺達の得になる事は何もないだろ」
「しかし……!」
「知りたがりの女に知りたい事を教えてやる。おとなしくさせるにゃ、一番いい対応だと思うが」
「まあ、よかろう」
 諦めた風に、ザッフェレルは言った。
「確かに、土の神機バランフォルシュはある」
 朗々たる声が、説明を始める。
「だが、我々はバランフォルシュを稼動させないと結論を出している。何故なら……」
「ミルカが他の神機に乗り合わせる場合、降りた後で体を慰めれば済む。しかしバランフォルシュを動かした場合……条件が変わる」
 重々しく、ティトーが付け足した。
「バランフォルシュを動かした場合、神機へのエネルギー供給率は常に百三十パーセント。それだけ聞けば魅力的だが……代わりにミルカは、苦痛に晒される事になる」
「苦痛、と一言で言っても生半可なものじゃないわ」
 フラウが、後を引き取る。
「初代ミルカはバランフォルシュ搭乗後、苦痛に耐え切れずに命を落としてしまったくらいですもの」
 ジュリアスが、言葉を結んだ。
「俺達のバランフォルシュはそういう仕様だから稼動させない事で意見が一致し、代々のミルカは他の神機に乗り合わせる事で任務を全うしてきた。ただ、敵神機は……逆仕様らしいけどな」
「逆……?」
 深花の呟きに、ジュリアスが頷く。
「捕らえた天敵から聞き出した事実からの類推なんだが……敵バランフォルシュは自分に乗り込んだ時にはパイロットに快楽を与え、他の神機に乗り込んだ時には苦痛を与える仕様らしいんだ」
 限界に近い力を発揮できる神機と、限界以上の力を発揮できる神機。
 自分の事を考えると、それが真実ならどう考えても天敵の方に分があるとしか思えない。
「そこがうまいバランスでな」
 ザッフェレルが、説明を付け足した。
「敵のバランフォルシュ搭乗は、あの者が限界を迎えるまで……その時間は、かなり短い」
「俺達の場合、工夫すれば限界までの時間はいくらでも引き伸ばせるからな。昔は、最初のラッシュを乗り切れさえすればしばらくは何とかなってた」
 深花は唇を噛み、決意を固めた。
「たとえ我が身が苦痛に晒されようと、私はバランフォルシュに会いたい。会って、話がしたいのです」
 ザッフェレルを見つめ、懇願する。
「お願いです、教えて下さい。バランフォルシュは、どこにいるんですか?」


 そんな経緯があって、四人は土の精霊を祀る神殿への巡礼に旅立つ事になった。
 四人がいなくなれば基地内の主戦力が消える訳だから一悶着あるかと思ったが……ザッフェレルが上層部をどう説得したのかは分からないが四人が旅に出る許可が下り、今日無事に旅立つ事ができたのである。
「ふう……」
 あぶみを踏みっ放しで凝り固まったふくらはぎを揉みほぐし、深花は一息ついていた。
 街道沿いにある宿場町に立ち並ぶ宿屋の一室が、今夜のねぐらである。
 比較的しっかりした造りの宿をティトーとジュリアスが選んだが、部屋のレベルはシンプルを通り越して粗末と表現した方が近い。
「おーい、深花」
 ドアをノックする音と共に、ティトーの声がした。
「夕食とミーティングだ。降りてきな」
「はい」
 膝下まで丈のある革のブーツを履くと、深花は部屋を出て食堂へ歩いていく。
 食堂では、四人掛けの席にジュリアスとフラウが先に腰掛けて待っていた。
 深花はフラウの隣席に座り、ティトーを待つ。
 調理場からやって来たティトーは、その手に丸めた羊皮紙を持っていた。


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