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『名探偵N』
【その他 推理小説】

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『名探偵N 〜尋問技術〜』-1

【何よりすばやく迅速に。これが鉄則だ――名もなき名探偵】

ある日の昼下がり。
警部は名探偵の事務所を訪れた。
数日前、警部は名探偵にある事件についての協力を依頼した。
ある事件について犯人が1人逮捕されたのだが、強情な事にさっぱり口を割らない。
それについてのアドバイスを依頼しようと思ったのだ。
事務所に入ると、何やら騒がしい。
どうやら、名探偵と助手が口論しているようだ。

「だからぁ、ホシは2つだって言ってるだろう」
「いいえ、絶対に3つです。例え名探偵でもこれは譲れません」
「君は何年私の助手をしていると思っているんだ!」
「それとこれとは関係ありませんっ!」

机の上に広げた数枚の紙を挟んで睨み合う2人。
事件についての意見が割れているのだろうか。
このままでは取っ組み合いになりかねないと思い、警部が間に割って入る。

「まあまあ、お二人とも落ち着いて…」
『あんたは黙ってなさいっ!』
期せずして、二人の声がハモる。
しかし、警部には一つ解せない事があった。
「あのぉ、犯人は1人なんですが…」
「悪いが今、そんな事に構っている暇はないんだ」
「はぁ?」
「これを見たまえ」

わけが分からないといった様子の警部に、名探偵はおもむろに手元の紙を差し出した。
「これは……」
その紙のタイトルを見て、警部は絶句した。


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警部の肩に手を置いて、名探偵はこう言った。
「悪いが、こっちが先約でね」


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