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異界幻想
【ファンタジー 官能小説】

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異界幻想ゼヴ・アファレヒト-7

「すみません、聞かれるのは嫌な話でしたよね」
 しゅんとしている深花を見て、フラウはくすくす笑う。
「いいのよ。事実を話して傷つくような、変わった真似はしないから」
 それより、とフラウは付け足した。
「どうしてジュリアスに興味を持ったの?」
 聞かれた途端、背中の嫌な汗が再発する。
 おそらく、フラウの育ちは恵まれていない。
 彼女はその生活から自分を救ってくれたジュリアスに深く感謝し、恋心を抱いているのだ。
 フラウにとってジュリアスは高嶺の花なのだろうが、ライバルがいないに越した事はない。
 ましてや自分は最初の邂逅からジュリアスへは好感情を抱いておらず、むしろ毛嫌いしていた立場である。
「へ……変な意味はないんです。ただ……今日のダンスレッスン前に色々と話して、むやみに色んな事を心得てるから……ちょっとしたお金持ちなのかと思って。まさか、そんな立派そうな名前だとは思わなかったですけど」
 へどもどしながら弁解すると、フラウはゆっくり首を振って深花の意見を否定した。
「立派『そう』じゃないわ。実際に立派なのよ」
「そうですね……」
 ほんのちょっとした好奇心がとんでもないものを引きずり出してしまったと、深花は思う。
「恥かきついでに教えて欲しいんですけど……」
 恐る恐る切り出すと、フラウは首をかしげて先を促した。
「ティトーさんは、どんな人なんですか?」
「ティトー?彼もまあ、いいとこのボンボンよ」
 やっぱりか、と深花は思う。
 少ししか年の違わない自分やフラウにダンスのレッスンをつけられるくらいに踊るのが上手な時点で、知らない経歴があるんだろうと見当はついていた。
「リオ・ゼネルヴァには一つの国家しかないけれど、天敵との戦闘に忙しくて内乱や謀反を起こされるととてもじゃないけどそっちに手が回らなくなるわ。だから王室は昔から、将来は国の中枢に関わる事になる貴族の子弟を幼い頃から王都に集めて交流させているの」
 フラウは、ジュリアスとティトーの馴れ初めを教えてくれた。
「事を起こさないよう互いを監視させるにしても顔を知っていた方が好都合だから、という理由でね。そういう訳で、あの二人は軍に入る前からの友人同士なのよ」
 一息入れて肩をすくめ、言葉を付け加える。
「ジュリアスは大公爵の。ティトーは権力者の身内だから、いくら貴族の子弟でも気安く声をかけられる二人じゃないのよね」
「はぁ……」
 聞けば聞くほどティトーとジュリアスはセレブリティ、アッパークラスの人間らしい。
「そんな人達だからって、萎縮しちゃ駄目よ」
 フラウに釘を刺され、深花は目をぱちくりさせた。
「絶縁してるジュリアスはもちろん、ティトーだって出自をひけらかしたりはしてないわ。彼らは周囲の人達に、ごく普通の人間として接して欲しいのよ。特に親しいあたし達にはなおさら……ね」
「……はい」
 諸々の事を親切に教えてくれたフラウの忠告を、深花は真摯に受け止める。
「さて……」
 こきん、と首を鳴らしつつフラウは言った。
「言いづらい事を言わせた……と後悔してるかしら?」
 切り込んだ話題に、深花はしどろもどろに頷く。
「じゃ、謝罪の証として……今度一緒に、マイレンクォードへ乗って欲しいわね」
「え……」
 一瞬呆気にとられた深花は、ティトーの言動を思い出していた。
 自分はフラウとの同乗を全く考えていなかったが、チームリーダーであるティトーは最初からフラウを頭数に入れている。
 つまり、女同士で……。
「あ、う……」
 あまりと言えばあまりの展開に、深花は口をぱくぱくさせる事しかできなかった。
「ティトーはあなたが色々な事に慣れていないから、慣れるまではあたしにお預けを食わす気だったけど……それじゃあ不平等よね」
「ま、ましゃかフラウさん……」
 ある考えが、深花の脳裏に浮かぶ。
「このために、色々教えてくれたんですか……?」
「まあね」
 フラウは、あっさり認めた。


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