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異界幻想
【ファンタジー 官能小説】

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異界幻想ゼヴ・アファレヒト-16

「あやつは、蛇よりしつこいですな」
「そう言うな。あれで役に立つ事もある」
 どっちにしろひどい言いようをされている人物の事を、深花はジュリアスに尋ねる。
「ね……騎士団長って、どんな人?」
 入城前から仏頂面のジュリアスは、仏頂面のままで答えた。
「ザッフェレルの因縁の相手、って所だな。もともとザッフェレルは下士官だったんだが、パートナーをなくしたカイタティルマートが興味を示してパイロットに選ばれたんだ。それが面白くないのが現騎士団長、サマレフェロアだった。サマレフェロアはカイタティルマートのパイロット候補生として入隊していたから、あっちからすればパイロットの座を横取りされたに等しい。って訳でザッフェレルがパイロットを引退するまで長々しつこく延々と、サマレフェロアは細々嫌がらせをかましてたんだ」
 聞くだけで陰湿な人物である。
「それじゃ……」
 深花の声に、ジュリアスは頷いた。
「ザッフェレルに嫌がらせがしたくて駄々捏ねてんだろ」
「因縁?それは違うぞ、二人とも」
 ザッフェレルが口を挟み、訂正する。
「少なくとも吾輩は、サマレフェロアの事をライバルなどと上等なものとして認めてはおらぬからな」
「余計悪いじゃねえかっ」
 テンポのいい会話にひとしきり笑った後、ユートバルトは席を立った。
「ではザッフェレル、申し訳ないが少し我慢してくれ。もう少ししたら人を呼びにやらせるから、後は筋書き通りに頼む」
「承知した」
 一つ頷いたユートバルトは、女性陣を眺める。
「本当に美しい」
 呟くように言うと、ファスティーヌと視線を絡め合わせた。
「……では、頼んだぞ」
 ユートバルトが出ていくと、深花とフラウにザッフェレルが説明する。
「心配には及ばん。ちょっとした演出でな、深花のファーストダンスを誰が踊るか口論する事になっておるのだよ」
「へっ!?」
 いきなり引き合いに出され、深花は自分を指差した。
「そのようにして、主に価値を付けておく。まあ、王室の常套手段よ」
「価値……」
「非歓迎派への牽制、ってこった」
 ティトーはそう言うと、さっと立ち上がった。
 部屋の外から、一行を呼び出す声があったせいである。
「では、ご令嬢。吾輩ではご不満でしょうが、会場までエスコートさせていただきますぞ」
「仕方ないですわね」
 わざと澄ました声で答えると、ファスティーヌはザッフェレルの腕をとった。
「フラウ。俺と一緒でいいな?」
 ティトーの声にフラウは頷き、ティトーに寄り添った。
「そんなに緊張するな。ずっと無言で、分かりやすいったらないぞ」
 必然的に残るのは、深花とジュリアスである。
「帰還者と発見者。まあ、妥当な組み合わせってこった」
 それだけ言うと、ジュリアスは腕を差し出してきた。
 他の二人に倣い、腕を絡めて寄り添う。
 三組の男女は、豪勢な廊下をゆっくり歩いていった。
 案内役が開けたドアから入った途端、見えたのは贅を尽くした広い宴会場とひしめく人々……少し離れた足元には、左右に分かれて優雅にカーブを描く階段がある。
 近い場所に楽士がいて、ファンファーレを吹き鳴らした。
 巻物を持った係官が、声を張り上げる。
「ホーヴェリア・ゼパム王立軍所属、ザッフェレル大佐……そして、ファスティーヌ・ラウエラ・ファルマン伯爵令嬢」
 二人は威厳たっぷりに歩みを進め、宴会場へ降りていった。


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