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欲しかったもの
【その他 恋愛小説】

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欲しかったもの-2

それから6年後私は21歳になった。仕事をして、それなりに恋愛をして人を好きになった。告白されて付き合ってみても、しっくりこない。好きになっても踏み込めない。そんな時友達から泰隆が結婚するという噂を聞いた。私はこれでふっきれると思った。それからは新しい生活をそれなりに楽しんで過ごしていた。
そんなある日、突然泰隆から連絡がきた。6年たった今私は正直動揺した。怖いのと、何を話せばいいのか・・・。
とにかく、電話がかかってきて、出る事にした。
泰隆『お久しぶりです。突然なんですけど、どうしてもあやまりたくて、友達に頼んで無理矢理連絡先聞いたんです』
謝る!?私はなんとか普通に会話しながらも何を謝ってもらいたいのか分からなかった。『何かあったの?謝るって?』私はどうせ結婚する前の思い出話でもしたいだけだと思って辛かった。

『今さらって思うだろうけど、中学の時中途半端だったし、まわりに冷やかされて、うまく言いたい事言えなかったから』

もう6年経ってるよ・・・
それから泰隆は緊張してるせいか今してる仕事とか、6年間何してたとかを早口でしゃべりまくった。少し落ち着いた頃『本当はもっと早く・・・ずっと前から会いたかったんだ』って・・『会って話せないかな?』って。私は会うべきか会わないべきか迷ったあげく  『私明日休みだから、明日でよければ仕事終わった後でもいいなら・・』 急遽明日久しぶりに会う事になった。

緊張で眠れなかった。何を言われるのか・・・何を話せばいいのか、昔のまま変わってないのかとか・・。何より、嬉しい気持ちと怖い気持ちがぶつかりあって胸がつぶれそうだった。
次の日泰隆は仕事が終わった後約束とおり迎えに来てくれた。 私は緊張で声が震えてぎこちない。
『お疲れ様。乗ってもいい?本当に久しぶり。すごく変わっててびっくりした』
6年振りに会った泰隆は笑顔だけは昔のまま。顔つきは男っぽくなって、声も低くなってた。細かった体もがっしりして、背も明らかに高くなってる。男の人だった。
『久しぶりです。本当に会えてよかった・・。』
あと言葉使いも変わってた(笑)ぎこちない敬語で。営業の関係で使わないといけないとか?仕事は車の整備関係。しかも偶然私が利用してる所!!

とにかく私達は車の中で話しだした。
泰隆はしきりに謝る。なぜ謝るのか・・・

それは〈告白の返事が出来なかったこと〉冷やかされすぎて、行動できなかったのに、私達をのぞいてまわりが盛り上がって話が進んでいたせいだった。
 私も当時悩んでいたことだった。
<花火大会について>
彼も二人でいきたかったらしい。いきなり友達が来て会場まで案内してくれと言われて、『彼女と行くから会場まで』のはずだったのが無理矢理着いてきたんだって。

笑っちゃった

そして<彼自身引きずって、その後恋愛がうまくできなかった>という事

ずっと会いたかったと言われて私は思わず泣いてしまった。
初めて彼の前で泣いた。
彼は初めて私を抱き締めてくれた。涙がとまらず大声で泣きじゃくってしまった・・・
『なんで今さら・・6年だよ!?忘れたつもりだったのに・・・それに結婚するって聞いてたから!!』
康隆は最初無言で強く抱き締めたまま・・『ごめんな・・』『結婚の話は友達がふざけていつのまにか噂が広まってしまったんだ』って・・・。

 私は気付いていた。車の中には可愛らしいぬいぐるみや、彼女の好みだと思われるキャラクターがたくさんあった。もちろん泰隆に大切な彼女がいるのかと聞くと曖昧にはぐらかす。
結局泰隆が何をしたかったのか、何を言いたかったのか、何を残したかったのか私は分からない。ただ苦しかった・・胸が痛かった。6年前と同じ・・・。
『私は昔も今も泰隆の彼女になりたかったんだよ・・・・』

それを聞いて彼は困ったような、なんとも言えない顔した。何か言いたそうに・・・でも結局何も言わなかった。


それから私は泰隆とは一切連絡を取っていない。  
何通かのメールと何回か電話が来たけど、返さなかった。アドレスを変え、しばく着信拒否をした。

苦しかった。怖かった。どんな変化があろうとも、苦しさから逃れたかった。自分のものにしたかったんだ。


たぶんもうすぐ泰隆は結婚する。 


私は次に進む為にも、この思いを乗り切らなきゃいけないと思う。


6年越しの出来事と、この思いをバネにして、新しい愛を育む為に。


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