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『魔人』と『女聖騎士』
【ファンタジー 官能小説】

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第三話――魔人と死神と皇国の聖女-13

……実は、自分もこういった場に不慣れなのだ。侯爵家の息女といえども、騎士の身。社交場でも鎧を纏っているほうが多かった。もちろん、男性にエスコートされての参加などは一度もない。

それどころか、貴族の令嬢のくせに、フレアースカートの裾に足を取られ、転びそうになってしまった。



(これでは、どちらが貴族かわかったものではないな……)



アリスは、心の中で自嘲する。

それも、このエスコートする『聖人』の身振りが堂々としているせいだ。二度程度しか、社交場に出たことがないなど、信じ難いほどの威風だ。

ドラゴン王国王都リンドブル――その西側に聳えるアルグッシム山地の麓に聳えるのがこの竜の国の宮殿『ヴィーヴル』である。

その古流ダイブル様式の、白大理石の大廊――その真ん中に敷かれた真紅のカーペットを、ふたりと一匹はしずしずと歩いていく。

エレナ親衛隊の者たちは、全員招待を受けているのだが、その主であるエレナも含めてそれぞれのタイミングで入廷するそうだ。

確か、すでに隊長のマデリーンが数名の部下と、なぜか拒否権を与えられていない逆エスコートを受けたゲルハルトを連れ立って会場へと向かっていたはずである。

エレナはよくわからないが、すくなくとも自分たちが出るときにはまだ支度をしていた、と記憶している。妙にそわついていたのは気になったが、まあ、彼女にも他人には理解しかねる事情くらいあるのだろう。



……そんなコトを考えている間に、廊下を抜け、一定の間隔で八名の衛兵に守られた会場の入り口へと辿りついた。



揃って大柄の、歴戦の猛者といった風貌の兵たちだ。胸には竜の紋章、手には屋内用の歩兵槍が握られている。

うち、ひとりが自分たち――というか『聖人』パスクの姿を見てとり、恭しく会場の扉を開けてくれた。

内外の気圧差で、ブワッとアリスの赤毛が背中へと揺れる。

同時に、これまで遮音されていた会場内のざわつきが耳の奥を刺激してきた。




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