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どこにでもないちいさなおはなし
【ファンタジー 恋愛小説】

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どこにでもないちいさなおはなし-9

 少女と上等な上着を着たカエルを乗せた馬車はやっと大きな街に辿りつきました。そこは熱気と灯りが漏れる街でした。
馬車が入ったのは街の南側でした。
馬車から見える様子だと、どうやら、たくさんの商店や飲食店が建ち並んでいるようでした。

白髪の老人は馬車を止めると、二人を荷台から、下ろします。
少女が小さな硬貨を差し出すと、頭を撫でて、いいんだよ、と、言いました。

少女と上等な上着を着たカエルは、丁寧にお礼をしました。
その様子を見ていた白髪の老人は、思っていたのでした。
二人はきっと高貴な家の子供なのだろう、と。


白髪の老人と別れた少女と上等な上着を着たカエルは、街の入口に立ったまま、周りをずっと見ていました。

二人には街はとても明るくて、胸がドキドキするのでした。

商店や酒場から漏れる声を聞きながら上等な上着を着たカエルは少女を見て言いました。

「さぁ、これから、どうしようか。僕が思うに、まずはあまり高くない宿屋を探すこと
が、いいと、思うんだ」

あかむらさきのワンピースを着た少女は視線をカエルに戻して、言いました。

「そうね。でも、わたしたちが持っているコイン、使えるかしら?」

上等な上着を着たカエルは、うーん、と、唸り、腕組をしました。

「そうだった。さっきのおじいさんも受け取らなかったし。もしかしたら、使えないのかも、しれないね。例えば……そう、おもちゃとか」

その答えを聞いた少女は、少ししょんぼりとした表情を浮かべ、肩を落としました。

「そうしたら、わたしたち、何も食べれない。……さっきのおじいさんに聞けばよかったわね」

その様子を見ていた上等な上着を着たカエルは、少女を励ますように、言います。

「大丈夫、なんとか、なるさ。僕が思うに、他の物を売ったっていいと、思うんだ」

上等な上着を着たカエルが、そんな風に、明るく言うので、少女も少し気が晴れたようでした。

「そうね。……じゃあ、そこのお店で、まず、使えるかどうか、聞いてみましょう」

少女はすぐ右手にあった、小さな雑貨屋を指差しました。

少女と上等な上着を着たカエルは、その、右手にあった雑貨屋へ向かいました。
雑貨屋は両隣の店に比べると、幾分小さく古いようでした。

少女と上等な上着を着たカエルは、すっかり変色して黒くなった重い木の扉を二人で引き開けました。


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