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どこにでもないちいさなおはなし
【ファンタジー 恋愛小説】

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どこにでもないちいさなおはなし-55

「ささやかではありますがお食事を用意しました。我が国の王も待っております。どうぞいらしてください」

リールは小さく頷くと立ち上がりました。それに合わせて部屋にいた侍女が頭を下げ見送ります。一筋また涙が流れ、それを拭こうとした侍女の手をそっと遮り、自分の手袋でそっと拭いました。するとあんなに流れていた涙が止まったのでした。大臣も頭を下げリールが前まで来ると先に立ち歩き始めました。たくさんの植物が廊下の壁でそっとリールを見ていました。その中を歩いていくと大きな木製の扉の前で大臣が止まり声を高らかに上げて言いました。

「イヴ様のお成りです」

扉の前に立つ二人の兵士はリールに頭を下げてから扉を開けました。中には光が溢れ、長いテーブルにはマイラやジャック、ティアンと女王が座っていました。

大臣が横にずれ、リールがそっと中に入って行きました。女王以外の三人は息を呑みました。白い長いドレスに身を包み豪華な装飾をしたリールはそれぞれの面々を見て顔を上げて無理矢理に笑みを作りました。女王は敬意をこめて立ち上がり頭を下げました。三人も立ち上がり同じように頭を下げたのでした。
侍女がリールを女王の反対側の席に案内し、リールは素直にその椅子に座りました。少しテーブルが高かったのですが分厚いクッションが敷いてあったので高さが丁度良くなっていました。
それを見届けてから女王が座り、他の三人も座りました。

「イヴ様」
女王が声をかけリールは女王を見ました。座ったまま女王は頭を下げてから顔を上げ、ゆっくりと口を開きました。

「まずはご無事に我が国へいらして頂けた事、お礼申し上げます。それからこの様な世情ではありますがイヴ様にご就任、お喜び申し上げます。さらに先代のイヴ様の訃報、ご心痛お察しいたします。どうぞ我が国でいつまででもご滞在なさってその傷を少しでも癒してくださいませ」

リールは泣きそうになるのを堪えて女王を見つめ、同じように頭を下げました。
そしてそのまま言いました。

「私の方こそ、お礼申し上げます。母……いえ、先代の願い聞き届けて頂き、無きキメール・ド・イヴの全国民を受け入れて頂き、更に私達を迎えに来て頂き、本当にありがとうございました」

女王は首を振りました。頭が揺れるとティアラについている宝石が揺れてチリンチリンと音が鳴りました。

「頭をお上げください。我々がイヴ様に協力するのは当たり前の事なのですよ」

リールは頭を上げて微笑みました。

「ありがとう。そう言って頂けると心が軽くなります。……どうぞ、私のような年端もいかないイヴの事など敬う事無く接してください」

女王は首をまた振りました。

「いいえ、貴方様は立派なイヴ様に有らせられます。とにかく食事に致しましょう。……きっとあまり食べていらっしゃらないだろうと思って腕を振るわせました」

女王がパチン、と指を弾くと扉が開かれ次から次へと料理が運ばれてきました。
食事は本当に美味しくて、何も無ければリールももっと箸が進んでいたのでしょうが、マイティを失った事が大きすぎてほとんど食べずに終わってしまいました。

女王は直接リールに話しかける事はほとんどせず、ジャックとマイラにこれまでの経緯を尋ねていました。
食事が終わると女王は大臣を呼び、三人は他の部屋に案内されました。部屋を出て行く時、ティアンはそっとリールを見ましたが、リールは小さく頷き少し笑ったので、結局何も出来ず侍女の案内で出て行きました。
二人きりになった広間で女王はようやくリールに声をかけました。


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