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どこにでもないちいさなおはなし
【ファンタジー 恋愛小説】

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どこにでもないちいさなおはなし-47

「ティアン、結局巻き込んでしまってごめんね。あなたの国がどこか分からないけれど、いつでも私達と離れていいのよ」

リールは最後まで食べながら焚き火を挟んで目の前に居るティアンそう呟きました。ティアンは何も言えませんでした。ただ、頷くだけでした。

それからすぐに五人は腰を上げいつものように歩き始めました。このまま川沿いにずっと歩いていけばメリーガーデンに辿り着けるはずだとジャックが説明をし出来るだけ追っ手に見つからないような道を歩いていく事になりました。
メリーガーデンまでは遠い道のりでした。何度か追っ手と遭い、その度にジャックやマイティがリールとティアンを守りました。
日に日に世界の情勢は悪化していきました。各地で略奪や弱者征服の動きが高まり新しい勢力がいくつも出てきました。ルルビーの王ジュリアスはあの本に魅入られてしまっていました。すでにルルビーの実権は他の人に移っていました。

山道を歩いて居た時、リール達は一列になっていました。リールは後ろから二番目に位置していて、その後ろにはマイティがいました。リールは数日前からあまり調子が良くなく、前の三人に遅れぎみでした。ティアンとの間に距離が出来て二人きりになった時でした。

「リール」

マイティがそっと声を掛けました。リールが肩で息をしながら立ち止まって後ろを振り返ると、マイティが桃色の花を一輪そっと差し出しました。

「わ、綺麗。ありがとう。でも、みんなに遅れちゃうわ」

リールが小さな手で受け取りながら前方をちらりと見ました。マイティは、ハハッと乾いた笑いを浮かべて言いました。

「良いんだよ、リール。君が主役の旅なんだから、君のペースで行けば」

がしがしと毛がふさふさに生えた手でマイティはリールの頭を撫でました。

「そら、つけてやろう。きっと君のその美しい髪にはその綺麗な花がよく似合う。ただし花も君には負けちゃうけれどね」

リールの手から再びマイティは花を抜き取るとそっとリールの髪に挿しました。花は嬉しそうに花びらの色を一層濃くしました。

「ありがとう。でも私のわがままで付き合わせているのだから、そんな訳にもいかないわ」

リールは嬉しそうに笑ってからそう言い、歩き始めようとしました。しかし、マイティは小さな手を素早く掴み引き止めました。

「ゆっくりで良いから。その代わり、俺の話を聞いてくれないか?」

手を引かれた拍子に頭に付いた花から花びらがひらりと落ちて岩山の間を吹きぬけた風それを攫って行きました。
リールはマイティの真剣な目に頷き、二人は手を繋いだまま一列になって歩き始めました。

「ネーリア様から聞いているかもしれないけれど、俺は一匹の汚い兎だったんだ」

リールの小さな歩幅に合わせてマイティはゆっくり進み、リールは何も言わずに前を向いて歩き続けました。

「すごく昔はね、普通の兎だったんだ。小さな……リールに似てものすごくかわいい女の子に飼われていたんだよ。だけど、いつの間にか、俺は喋れる事に気づいた。だから、どうしてもその女の子に伝えたかった事があったから、つい話しかけてしまったんだ。いつものように」

強い風がびゅうびゅうと吹き、リールの髪を揺らしました。花びらが一枚、また一枚と風に踊って離れて行きます。


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