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愛歌
【悲恋 恋愛小説】

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愛歌-1

時は幕末。薩長の力は圧倒的で幕府が降参するのも時間の問題。

だが、それでも志士達は幕府を潰すために戦場へ赴かなければならない。

高杉晋之助もその志士の一人。戦に出て、傷を負いながらも、生きながらえてきたが、明日は今までと規模が違うのが明白だ。

自らの命に何かあるかもしれぬと察したのだろうか。戦の前の晩、自らの組の屋敷にある自室へと妻を呼び寄せた。




「どうされましたの」





「明日の戦はでかい。もしやと思いお前を呼んだのだ」




「…そんなこと……言わないで下さいまし。あなた様は明日帰ってきて下さいます」




「菖蒲…」




晋之助は壊れてしめうのではないかと思うほど、強く、強く、妻の身体を抱きしめた。




「俺はお前が好きだ。夫婦の契りを結んでから、いや、お前に心奪われたその日からずっと傍にいたいと願った。死ぬまで、お前を守っていきたいと思った。…俺はお前に出会うまで、女関係はくずだった。それを変えないといけないと思わせたのが俺の親友だった男だ。そいつは人を愛するということが、どんなに大切なのかということを教えてくれた。そいつはいなくなったが、菖蒲という光をくれた。だが、戦乱は愚か者たちのせいで終わることを知らない。そして、人間は儚く脆い生き物だ」




「ですが!…」




「菖蒲、俺はこの命が無くなろうともお前の傍でお前を守り続けるよ」




「うっ…ふっ…晋様…晋様がいなければ菖蒲は、もうどう生きていけばよいのかわかりませぬ」




「泣くなぁ、何も絶対死ぬとは限らねぇ。もちろん、生きて帰ってくるつもりだ。ただ、もし万が一のことを思って、話しただけだからよ。子ども達もまだ小さい。俺がいてやらなくちゃな」




「…ぐすっ。菖蒲は晋様のご武運を祈っております」




「あぁ、今日はここで一緒に寝ようか」




「はい…」





玄平…俺を生かして帰らせてくれ。こいつを一人にさせたくねぇんだよ…

こんな気持ちにさせたのはお前なんだから責任とってくれよな。


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