投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

やっぱすっきゃねん!
【スポーツ その他小説】

やっぱすっきゃねん!の最初へ やっぱすっきゃねん! 448 やっぱすっきゃねん! 450 やっぱすっきゃねん!の最後へ

やっぱすっきゃねん!VO-9

 内心、驚く一ノ瀬。

(あれじゃ、突っ込んでもアウトだな…)

 3塁に戻ると、コーチャーの和田を呼んだ。

「あのセンター、前進守備だったか?」
「いえ。定位置から、少し前ぐらいです」

 和田は、感服しきった顔でさらに続ける。

「ものすごいダッシュで掴んだら、ホームまで…あのセンター、要注意ですよ」
「まったくだ…データに無かったな」

 一ノ瀬は、打席に入ろうとする秋川に目を向けた。

「決めろよ、進…」

 秋川の中に緊張が走る。こんなチャンスで、打席に入る事など無かったから。
 だから、動揺を隠せないピッチャーの様子など、見る余裕もない。

 だが、今度は永井が気づいた。
 彼は、秋川が自分を見た時に、何のサインも与えることなく両肩を回した──リラックスしろと。

(そうだよな。打率2割台のオレが決めようなんて、ムシが良すぎるよな…)

 秋川の中から、余計な虚栄心が抜けた。

 1塁に出た佳代は、大きくリードを取る。狙いは盗塁して、プレッシャーをさらにかける事。

(あのピッチャーの癖は分かってる…背中の傾き具合だ)

 ピッチャーがセット・ポジションに入った。背中はやや反り気味で、背番号がはっきりと見える。

(牽制…)

 次の瞬間、プレートに乗った右足が、素早く後ろに滑った。
 佳代は、1塁へ滑り込む。牽制球を掴んだファーストがタッチするが、塁審は両手を横に広げた。

(これで、いいかな?)

 佳代は前回の試合で、癖を利用されて牽制アウトになった。
 この件をミーティングの議題とし、改善を考えた策が今の戻り方だ。

 癖を知らなかったようにする。

 要はそういう仕草を見せて、相手に余計な考えを持たせないと思わせるわけだ。

(次は…?)

 再びリードを取る。背中は、少し丸まってるのか、背番号の先が折れて見えた。

 佳代は左足の爪先を、少し2塁方向に向けた。

 ピッチャーの軸足。右足の膝にユニフォームのシワが寄る──軸足に体重がかかった証。

(いまッ!)

 佳代はスパイクで土を蹴った。

「走ったァ!」

 内野手の叫びがピッチャーの耳に届いた。がしかし、投球動作に入った彼には、どうにもならない。
 変化球の握りのまま、真っ直ぐを投げるくらいしか対応策は無かった。


やっぱすっきゃねん!の最初へ やっぱすっきゃねん! 448 やっぱすっきゃねん! 450 やっぱすっきゃねん!の最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前