投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

異界幻想
【ファンタジー 官能小説】

異界幻想の最初へ 異界幻想 19 異界幻想 21 異界幻想の最後へ

異界幻想ゼヴ・セトロノシュ-20

「……抵抗はあるかい?」
 不意の質問に、深花は目を白黒させた。
「え?え、え?」
「神機に乗り込んだ後に行われる一連の行為に、抵抗はあるかい?」
 答えを急ぎすぎたと気づき、ティトーは質問を噛み砕く。
「ええ、まあ……控えめに言っても気が進まないというか……いやあの、ティトーさんやフラウさんが嫌いなのではなくってえとその」
 支離滅裂になっていく台詞を聞いて、ティトーは笑いを噛み殺した。
「神機に乗り込んだミルカの副作用、なんだが」
 真面目な表情を作って、ティトーは切り出す。
「そういった行為に関する耐性がつけばつくほど、活動限界までの時間は長くなるし衝動も抑えられるらしい」
 それを聞いた深花は、表情を曇らせる。
「どっちみちしなきゃならないんですね……」
「耐性がつくよう俺達三人でできる限りサポートするが、なぁ……こればっかりは慣れが必要だし、神機に乗り込んだだけで顔真っ赤にしてたら道のりは遠いとしか」
 ティトーの言葉は、不意に遮られた。
『準備はいいか?』
 脳内に響く声は、ザッフェレルのものである。
 本来ならばこんな真似はできないのだが、カイタティルマートの前搭乗者というコネを利用して通信しているのだ。
『此度の模擬戦、上層部は並々ならぬ関心を抱いておる』
「どうだかねー」
 続く演説を聞き流しながら、皮肉っぽくティトーは呟く。
「……ティトーさん」
 深花の声に、ティトーは注意をそちらに向けた。
「ん?」
「大佐を紹介いただいた時、大佐の事を『歓迎派』って言いましたよね?それってつまり、非歓迎派も存在するんじゃ……」
 尻すぼみになる語尾が、如実に不安感を表現する。
「まあ、諸手を上げて歓迎とはいかないって事さ」
 あっさりと、ティトーは認めた。
「イリャスクルネが失踪してからというもの、『もしもミルカが帰ってきたなら』は尽きる事のない議論の種だった。歓迎派は戦力の均衡が元に戻るのを喜び、非歓迎派は裏切り者には制裁を課すべきだとぶち上げる……幸いにして非歓迎派の意見は多くないから、気に病む事はない」
「私が来ただけで、いきなり許されるなんて虫のいい話はありませんものね……」
 自分が頑張って、汚名を返上するしかないのである。
『……私からは以上だ。各員の健闘を期待する』
 ザッフェレルの訓示が途切れると、ティトーの顔つきが引き締まった。
「さて、行くぞ!」
 気合いの入った一声と共に、深花に見えている景色が変わる。
 空中に浮遊したカイタティルマートは数度ホバリングすると、マイレンクォードに向かって突進した。
 今までとは桁違いのスピードに、ティトーは鋭く口笛を吹く。
「こいつぁ凄い!」
『こっちは冗談じゃないわ!』
 フラウの声が聞こえ、マイレンクォードが剣を構えた。
 ティトーはニヤリと笑い、得物を召喚する。
 スピードが命の風の神機は、レイピアのような細剣を得意武器にしていた。
 激しい音がして、剣と剣がぶつかり合う。
『何このスピード!ありえない!』
「ありえるのさ!今はな!」
 互いの剣を激しく打ち合わせながら、ティトーは言った。
「お前達だって感じるだろ!パワーが溢れてきやがる!」
『確かにな』
 違う方向から、ジュリアスの声がする。
『直接乗り込んだ時よりは不自由だが、これだけ動ければ十分だ』
 次の瞬間、ティトーは大きく後退していた。
 体勢を崩されてつんのめるマイレンクォードの眼前を、肉厚の刃が走り抜ける。
「うわ、あっぶねー」
 深花からすると、完全に殺意のある攻撃だった。
 そのくらい過激にやらねば訓練にならないのかも知れないが、間違ってあれを食らったら……恐ろしいので、その事は考えないようにする。


異界幻想の最初へ 異界幻想 19 異界幻想 21 異界幻想の最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前