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異界幻想
【ファンタジー 官能小説】

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異界幻想ゼヴ・セトロノシュ-2

 メタリックブラックに輝くボディは所々がシルバーで縁取りされ、まるで鎧のように見える。
 三人の姿を認めたか、凝った装飾が施されたフェイスガードの奥で紅い目がギラリと輝いた。
 鎧の表面から立ち上るオーラが、邪悪な鎧の好戦的な性格を如実に表している。
 青年は鼻を鳴らすと、不敵な笑みを浮かべた。
「ようやく姿を晒しやがったな、このハゲ!」
 確かに鎧の表面には毛髪に類する物がないから、兜もつるつるさらりである。
 しかし。
「ハゲってあーた……」
 呆れたような女の声が、青年の脳裏に響いた。
「ハゲはハゲだろ。俺はこいつの正式名称なんて知らねーしな!」
 青年はそう嘯くと、女に指示する。
「フラウ、お前は攻撃が止み次第、ジュリアスと共に反撃開始。俺は各機のサポートをする」
「了か……」

 ゴゥンッ!

 女が言い終わる前に、衝撃が三人を襲った。
 鎧が、三人に向かって衝撃波を放ったのである。
 逆巻く風は一瞬にして吹き散らされ、水膜が掻き乱された。

 ばちゅっ!

 耳障りな音と共に、水膜は弾けて地に落ちる。
「さすがっ……!」
 少年は、眉をしかめて呟いた。
「レグヅィオルシュ!」
 少年が、前方を指差しながら叫ぶ。
「行けぇっ!」
 実にアバウトな指令ではあったが、それには十分だった。
 三人の背後から、それは飛び出す。
 大きさは、邪悪な鎧と同程度。
 真紅をベースに、オレンジ色で装飾の施された機体。
 その猛々しさを示すが如く、肩部や膝部からは角のような突起が突き出ていた。
 白いフェイスガードの奥にある目が、メタリックブラックの鎧を見てすうっと狭まる。
 真紅の鎧は唸り声を上げると、邪悪な鎧に躍りかかった。
 邪悪な鎧も一声吠えると、真紅の鎧を迎撃する。
「あ〜あ、やっちゃった」
 頭上を飛び越していく真紅の鎧を見ながら、美女が呆れた声で呟いた。
「マイレンクォード!レグヅィオルシュのサポートお願い!」
 それから、凛とした声で指令を下す。
 その声に応えて、もう一機が姿を現した。
 大きさもシルエットも、真紅の鎧と似ている。
 ただしこちらは蒼白色に金色のアクセントを組み合わせており、突起のない機体は曲線が多く猛々しい印象は薄い。
 蒼い機体は邪悪な鎧の脇に回り込みつつ、宙から得物を召喚した。
 得物は分厚いブレードを持つ、オーソドックスなブロードソードである。
 剣を見た瞬間、邪悪な鎧は耳をつんざくような金切り声を上げた。
 その瞬間、真紅の鎧は慌てた様子で邪悪な鎧から離れる。
 蒼い鎧はブロードソードを構え、真紅の鎧に代わって邪悪な鎧と対峙した。
「くそっ……退け、レグヅィオルシュ!」
 いまいましげに目を細め、少年は真紅の鎧を呼び戻す。
 声を聞いた真紅の鎧は、邪悪な鎧へフェイスガードを向けたまま何歩か後ずさる。
「っておいっ……!?」
 それが指示に従った後退でない事に、少年は気づいた。
 少年が制止するより早く、真紅の鎧は唸りながら駆け出す。


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