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異界幻想
【ファンタジー 官能小説】

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異界幻想ゼヴ・セトロノシュ-14

 リオ・ゼネルヴァという世界を形作るのは地水火風、四つの力が基本だ。
 自分達四人の扱う神機は同じ名の精霊から直接分かたれたもので、それ故に他の神機とは一線を画する強力な力を有している。
 それだけの強大な力を必要とする理由は……人類に、天敵がいるから。
 世界や人類を生み出した四つの力は、別に人類の全面的な味方ではない。
 人類を滅殺し、世界を我が物とするために野望を燃やす人類の天敵、対存在もまたこの力が生み出したものなのだ。
 人類が精霊に望む強大な力は、同じ力が対存在の側にも与えられる。
 その逆も、またしかり。
 精霊達にとっては人類も天敵も、どちらも等しく愛しいのだ。
 互いの存亡を賭けた戦いはもはや思い出せないほどに古い時代から延々と続いているが、決着する見込みはまだない。
 天敵そのものはリオ・ゼネルヴァにおいて長い時間活動できないし、人類もまたしかり。
 生きていく環境が違いすぎ、互いの世界で長期間活動するためには環境の改変がどうしても必要になる。
 だがお互い、そんな環境改変を長い時間見過ごす事はない。
 前線基地など、出来上がる前に潰し合うのが関の山だ。
「環境改変によって、神機に供給されるエネルギーの効率が変わる。あ、エネルギーの定義だが……簡潔に言えば、神機の食事だな」
「……食事?」
 信じられない話が連続する中で急に出てきた現実的な言葉に、深花は眉をひそめる。
「そう、食事。神機は半生体装甲だから、めったに欠けたりはしない鉱物部分はともかく生体部分は当然何らかの手段によってエネルギーを充填しなきゃならないんだが……そこで俄然意義を持つのが土のお仕事、エネルギーの供給って事になる」
 神機は基本的に各々が大地からエネルギーを吸い上げ、全身を循環させて活動している。
 各個で吸い上げている分では通常の行動はともかくとしてフルパワーで活動するにはやや足りない所があり、そこをフォローするのが土の出力サポートという事になる。
 ただこれには条件があり、土の神機が補給できるのは同格の神機のみ。
 神機パイロットはその特性上四人で一つの小隊編成をとり、土の祝福を受けた人間は通常他の神機に乗り合わせて出力をサポートする。
 その際の出力は乗らなかった神機に百パーセント、乗った神機に最大で百三十パーセント程になる。
 神機個体がサポートなしで賄えるエネルギーはよくてフルパワー時の七十パーセント程度、悪くて三十パーセントに満たないくらい。
 レグヅィオルシュとジュリアスのようにパートナーでありながらずいぶんと同調できていなかったペアになるとパーセンテージはさらに下がるから、欠けた部分を補うという一見すると地味な土の役割分担が実はかなり重要なのは、納得できる話だろう。
「まあ、その食事……なんだが、フェイスガードっていうのは顔に対する攻撃を防ぐものだっていうのは、分かるよな?」
 歯切れの悪い言葉に、深花は首をかしげた。
「ぶっちゃけた話、神機には口がない」
「けれど戦闘中、エネルギーが足りなくなる時がある」
 フラウが部屋に入ってきて、元の席に腰掛けるとティトーの言葉の続きをそう引き継いだ。
「連絡が取れたわ。物凄ぉく喜んでたわよ」
「だろうなぁ……」
 ティトーはため息をつくと、腕を組む。
「話を続けさせてもらうと……戦闘中など緊急に大量のエネルギーが欲しい時、神機はパイロットを食う事がある」
 話が急にホラーになった。
「食うって……」
「神機にパイロットが乗り込んでいた場合の話、な。パイロットの命は、エネルギーが足りない時の非常食っつー意味合いもある」
「それを防ぐのも土のお仕事、と言えるわね」
 土の神機が十分なエネルギーを供給してくれれば、お腹が満たされている訳だから乗り込んでいるパートナーを吸収したりはしない。
「ところが、だ」
 ティトーの表情が、厳しくなる。


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