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異界幻想
【ファンタジー 官能小説】

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異界幻想ゼヴ・セトロノシュ-12

 ターコイズブルーのベースに赤やら金やらでアクセントを入れている、派手な髪色。
 唇が薄く、冷たく見える顔立ちだが左の目尻に泣き黒子のある双眸はかなりの垂れ目で、その実何とも言えない愛嬌がある。
 痩せぎす……だと思ったがよく見ればその体型はマラソン選手のように限界まで無駄を削ぎ落とした精悍なもので、まるでしなる鞭のような印象だ。
「そして、あたしはフラウ。よろしくね」
 美女の声に、深花はそちらを見る。
 小作りな顔にすらりと通った鼻筋。
 赤く彩られたバランスのいい唇に、見る者を怯ませずにはいられないぐらいに澄み切ったアイスブルーの瞳。
 胸の上くらいまである赤銅色の髪は、先端に緩いカールがかかっている。
 妬みなど抱く気にもなれないような完璧なスタイルが、露出度の高い服装によって強調されていた。
「それから……」
 ティトーの視線が、ちらりとジュリアスの方へ走る。
「改めて、自己紹介した方がいいかな?」
 目覚めつつあった意識の中でこいつに対して腹を立てていた事を思い出し、深花は身を固くした。
「いえ、結構です」
 素っ気ない物言いを聞いて、ティトーの目線が空を泳ぐ。
「じゃ、そいつは省くとして……君の事は、簡潔に聞いてる。名前は深花。『ラタ・パルセウム』において子を成していたイリャスクルネの孫娘であり、土の最高位ミルカを有する女の子」
 何だか知らない概念がぼろぼろ出てきたため、深花は眉をしかめた。
「……あなた方の知っている常識と概念は、私が育んできたものと大きく異なるようです。何がどうなっているのか、説明をお願いできますか?」
 切り込んだ質問に、ティトーは頷く。
「もちろんだ。隔たりを擦り合わせておかないと、何かと面倒があるからな……フラウ」
 ティトーがフラウに何事かを耳打ちすると、彼女は頷いて席を立った。
 それから医者を連れ、部屋を出て行く。
「君がこちらに来た事は、間違いなく第一級の吉報なものでね。上層部に報告を入れておく必要があるんだ」
 医者を人払いした理由を、ティトーはそう説明した。
「さて……何から話そうか」
 困った風に呟くが、黙ったままのジュリアスの方へは視線を流さない。
「じゃあまずは基本中の基本、この世界の事からにしよう」


 この世界の名は、『リオ・ゼネルヴァ』。
 深花が今まで暮らしてきた世界、『ラタ・パルセウム』とは双子のような関係にある。
 そのために生態系や文化面で、何かと共通項は多い。
 ただし互いの存在位置が時空間を越えているために、通常は二つの世界が交わる事はない。
 詳しく説明すると説明者ティトーにも理解できていない恐ろしく難しい理屈を捏ねくり回す必要が出て来るので、ここではそういった概念的な説明のみに留めるが……リオ・ゼネルヴァからラタ・パルセウムを透かし見る事はできる。
 そのために必要なのが、自分がジュリアスと共に乗り込んでいた大きな鎧、半生体装甲……神機(シンキ)。
 生物の特徴を内包し、鉱物の特徴で外観を鎧い、様々な能力を有する神機達。
 その中にはかつて、時を渡れる神機と空間を渡れる神機がいた。
 それらが協力する事により、昔は自由にラタ・パルセウムへと渡ったりしていたのだが……現在は両機共に撃破されてしまい、活動停止前に神機がパイロットに託した空間を透かし見る方法でのみ、ラタ・パルセウムを見る事が許されている。
 しかし神機と人間とでは扱える事物にはかなりの差があるため、人間だけでラタ・パルセウムを透かし見るためには強力な魔術師を複数人と数日を要する大掛かりな儀式とで開けたチャンネルを維持するために大量の家畜を生贄に捧げねばならず、とても現実的ではないので今の所はラタ・パルセウムを覗きたい物好きはあまりいない。
 そして……この国。
 レシュ・ホーヴ十五世を元首に据える、ホーヴェリア・ゼパム王国。
 多数の保護領を擁する、リオ・ゼネルヴァ唯一の国家。
 自分達が今いるここはホーヴェリア・ゼパム王立軍が有するカゼルリャ基地であり、王都から程近い要衝である。


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