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やっぱすっきゃねん!
【スポーツ その他小説】

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やっぱすっきゃねん!VN-6

「ランナー2塁ッ!」

 レギュラー組の練習が始まった。

 ノッカーがライト目掛けてバットを振り抜いた。
 低い打球。川畑が、ボールに向かってスパイクを蹴る。合わせて、セカンドの森尾もライト方向にバックする。

「…ハッ!」

 ダッシュする川畑の前でボールはバウンドした。
 グラブでキャッチすると、勢いのついた身体を大きくステップさせながら、素早くボールを右手に握り直して腕を強く振った。

 低く、鋭いボールがホームへ放たれた。

「ノーカットッ!」

 キャッチャー下賀茂が叫んだ──中継はいらないという意。
 ボールは勢いの落ちぬまま、滑るようなバウンドを残して下賀茂のミットに吸い込まれた。

「いいねえ。今のタイミングなら、完全にアウトだね」

 真後ろから眺めていた佳代は、川畑の動きに感心気だ。

「…ども」
「特に1歩目が良かったね」

 川畑は右手で帽子のツバをつまみ、遠慮がちな礼を示して佳代の後ろに下がった。

「次ッ、いくぞ!」

 再びライトに声がかかった。

「ヨシッ、こーい!」

 佳代は大きく右手を振り上げる。

「ランナー2塁ッ!」

 ノッカーの打ったゴロが1、2塁間を抜けた。
 佳代は帽子を飛ばし、打球目掛けてダッシュする。

(わたしだって…)

 狙いは川畑同様、速い返球を下賀茂に投げ返すこと。

 目の前にボールが近づく。地面ギリギリにグラブを伸ばして、身体をバウンドに合わせたが、

「アッ!」

 捕ったと思った瞬間、ボールは佳代のグラブをすり抜け、後方へと転がった。

 完全に目測を誤った。

 慌ててブレーキをかけて反転し、ボールを掴んでセカンドへと投げ返すが、すでにランナーはホーム生還しているタイミングだった。

「コラーッ!何やってんだッ!」
「す、すいませーんッ!」

 試合中にも見せたことのない凡ミス。さすがの佳代も顔が真っ赤になる。

「もう1本ッ!」
「ハイッ!」

 再びライトに打球が飛んだ。今度は、ミス無くボールを捕ってホームに返球出来た。

「ヨ〜シ、オッケーだ!」

 その後も、次々とポジション別に細かい状況に応じた連係プレイを繰り返していく。──青葉中野球の基本。ディフェンスこそ肝要と考えた練習。

 レギュラー陣はこの日、長い時間を守備練習に費やしていた。




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