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【純愛 恋愛小説】

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恋愛小説(5)-6



次の日の朝、僕は携帯電話の着信で眼を覚ました。安らかな夢を見ていたはずだけれど、起きた瞬間にそのことは忘れてしまった。着信主が、木村さんだったからだ。
「水谷!今日暇だろう!!」
「木村さん。そんなに大きな声を出さなくても聞こえてますよ」
「おぉ!すまんすまん!で、どうなんだ。暇なんだろう、お前」
木村さんには何かを決めつけて話す癖があった。別にそれが大きな問題を読んだ事は無かったけど、僕はその木村さんの癖にあまり良い思い出が無かったから好きではなかった。こういうとき、決まって何かが起こるのだ。勘弁してほしい。
「午前の講義が終われば、後は何もありませんが、どうしたんですか?何か急な用事でもあるんですか?」
「いや、ない!」
「だったら」
「ないが、ある!いや、あるわけではないんだが、とりあえずお前が居なきゃ話しにならんだ!頼む、午後からでいいから付き合ってくれ!」
「いったいどうしたんですか?」
「ヤバい、帰って来た!すまん、切るぞ!?午後になったら、また連絡する!」
一体、僕の周りで何が起こっているのだろう。僕にはさっぱり理解できなかった。寝起きの頭を無理矢理たたき起こされたって、ここまで訳のわからない事態にはならないと思う。

午後になって現れた木村さんは酷く慌てていて、まるで誰かに追われているみたいに挙動不審だったから面白い。
「どうしたんですかいったい。誰かにお金でも借りてるんですか?」
「いや、違う!いやいや、金は借りてるが、そんなことは今はどうでもいいんだ!水谷、困った事になったんだ。助けてくれ!」
「だから、いったいどうしたんですか?ちゃんと訳を話して下さい」
僕がそう言っている間も、木村さんは誰かに見つからないようにしているようだった。身体を小さくして、身を屈めて僕の影に隠れようとする。それは喜劇に出てくるピエロを思わせて、僕は可笑しかった。彼は何故こんなにも動揺しているのだろう。
「あのな、これはオフレコなんだがな」
「はい?」
随分と時間がたって、幾分か落ち着きを取り戻した木村さんが言ったのは、そんな言葉だった。小さな声で(ヒソヒソ話レベルの小さな声だ)ボソボソと話す木村さんは、見るからに滑稽だった。
「俺な、知香ちゃんの誕生日に、サプライズを仕掛けようと思っているんだ」
「あぁ、はい。それで、それがどうしたんですか」
「なんだお前、驚かないのか?」
「驚いてますよ。それで、なんなんですか」
「いや、サプライズパーティーを行うつもりでな。それで少しお前に頼みたいことがあるんだ」
「まどろっこしいですね。だから、なにを僕に頼もうって言うんですか」
「や、すまん。いや、パーティー会場自体は押さえたんだがな、肝心のプレゼントが用意出来ていないんだ」
「用意できていない?確か村田さんの誕生日ってもうすぐでしたよね?」
「あぁ、今週の日曜だ」
「明後日じゃないですか」
「そうなんだ、だから困ってるんだよ」
「買いに行けばいいじゃないですか?」
「買いにいくよ!」
「だったらいいじゃないですか」
「いや、違うんだ水谷。恥ずかしい話なんだがな、俺、ここのところそのサプライズパーティーでいっぱいいっぱいで、プレゼントの事を聞けてないんだ」
「聞けばいいじゃないですか」
「ばか!お前、そんなことしたら知香ちゃんが気付くかもしれないだろうが!」
ばかばかしかった。だって、とっくに気づいているのだから。


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