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【純愛 恋愛小説】

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恋愛小説(5)-11



「ちーくん!」
「どうしたの?」
冬休みが間近に迫って来た頃に、千明は慌てた様子で僕に声をかけてきた。とても寒い日だった。マイペースな千明らしくないその行動に僕は少しの違和感を覚えながら、僕は冷静を装ってその言葉に対応を示した。何故冷静を装う必要があるのかと聞かれても、僕にもわからない。この時はそうするべきだと思ったからそうしただけだ。
「大変や!」
「どうしたのさ?」
「私、告白された!」
それは特別不思議なことでは無い様に思われた。千明はとても魅力的な女性であることに僕は疑いを持たないし、性格だって随分と良い。標準語がフォーマルなこの地域において千明の関西弁はとても素敵だったし、なにより千明のオリジナリティやアイデンティティには誰しもが親密な感情を抱いてしまうのだから。でも僕は度肝を抜かれていた。千明が、告白を受けた?その言葉は、音を持った情報でしか僕に入ってこず、それを処理するのに随分と時間がかかってしまう。
「ちーくん、聞いてる?」
「あ、あぁ。聞いてるよ、もちろん。それで、相手は?」
僕は僕の言った質問に対して、混乱していた。どうしてそんなことを気にする必要があるのだろうか。千明が話して来たから?いや、たぶんそうじゃない。なんだか心の隅っこがざわざわとした。
「バイト先の人やねんけど」
「へぇ。良かったじゃない」
その言葉を聞いて千明がムッとした表情をとったから、僕はドキッとした。僕は今一体なんて言った?良かったと言ったのか?何故、千明がバイト先の人に告白されることが良かったのだ?
「ちーくん、なんも思わんの?」
「なにを思えばいいのさ」
「……もういいわ。話はそれだけ。以上。終わり!!」
千明がそう言ってずんずんと音が聞こえて来そうな勢いで千明が歩き出したから、僕はそれを追いかけた。千明はなにかに対して腹をたてていた。それが何か僕は知っているけれど、僕が思っている様に僕の身体は動いてくれなかった。
「千明?」
「ついてこんといて!」
「どうしたっていうのさ?」
「わからんの!?頭おかしいんちゃう!?ちーくん、ちょっと異常やで!?」
こんなことは初めてだった。千明が僕に対して期待していた言葉も、僕が言うべき言葉もその時気づいていたけれど、僕が言った言葉は場違いなものだった。それが千明を傷つけていた。胸に痛みが走った。千明の痛みが、僕に流れているのだ。凄まじい勢いでそれは僕の四肢に渡って、僕の身体をガンガンと殴っている。
「いつもそうやけど、今日ばっかりはさすがにヒドいわ!わからんの!?ホンマのホンマに、わからんでそう言ってんの!?」
千明はもう既に泣いていた。大きな水粒を瞳からこぼし、歯を食いしばりながら痛みに耐えていた。その痛みが僕に直接伝わってきて、僕はもうどうしようもない気持ちになった。強烈な痛みだ。耐えることなど、微塵も出来ない凄まじい勢いの痛みだ。それは千明のものだ。そして僕のものでもある。

「どうしてそんなことが言えるんよ?ひどすぎるって、そんなん。おかしいよ絶対。もう、私わからんよ……」

去って行ってしまう千明を、僕は追うことが出来ずにいた。追うべきだということはわかっていた。けれど足が少しも言う事をきこうとしないのだ。痛みがどんどんと痺れに変わってしまって、僕はその場に崩れた。動かせる部分が見当たらなかった。もちろん、それは脳を含めた全ての部分に言える事だ。千明が泣いていた。今までの涙とは全てが違う、涙を流していた。僕はどうすることもできずに、只その場で自分の身を抱えること以外出来なかった。
随分と時間がたってから気付いた事は、全ての事が変わってしまったという事だけだった。


続く。


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