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月夜と狼
【幼馴染 恋愛小説】

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月夜と狼-4

「う…うぅ…」

やがて、痛みは引いていった。
だが。トイレの床に転がった俺はすんなり立つことが出来ないでいた。

袖の奥にひっこんだまま手が見えない。
そでを引き上げようと持っていった口元が意外に早く袖にあたった。感覚が違う。
鼻先がせり出していた。

――なんだよ。これ…

その鼻先でたくし上げて出てきたのは手ではなく、やっぱり、犬の足だった。
下半身もズボンの先から足が見えない。
足を動かす。

まるで、『松の廊下』じゃんか。

服が邪魔で立てない。
上半身は簡単に抜け出ることが出来たがズボンが脱げない。
もがきまくってズボンがやっと脱げた。
トランクスの下から見えたのはやっぱり犬の足だった。

――うそだろ?

俺の視界に入る、俺の身体は犬そのもので、人間らしいところはなかった。


チョコレートがどうだとか、告白がどうだとか言える状況じゃなくなった……。
今だって落ち着いたわけじゃない。
夢ならはやく醒めてほしい。

足だけで立つことも出来なくなかったが、四つんばいの方が楽に動ける。
嫌な感じがする。
トイレの鏡にジャンプして見えた俺はやっぱり犬だった。
薄々分かってはいたが、その姿はやっぱり衝撃的だ。
人間の俺をひとまわりだけサイズダウンした体格だったから犬というか、まるで狼だ。

ゴムで胴にくっついたままのパンツを不本意ながら脱ぎ(パンツはいた犬なんか絶対ヘンだ。童話じゃあるまいし。誰かに見つかったら強烈に印象に残ってしまう)
服を掃除用具入れに押し込んだ。

ちゃりーん、と音がした。
多分、家のカギだ。
使えないし、帰れない。
そう思うと、大声で泣いてしまいたかった。

トイレの前の廊下に人の気配を感じる。
幸い、ここに入ってくる者はいなかった。
必死に考え、答えは出ないまま、人目を避けてここを出た。




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