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恋愛小説
【純愛 恋愛小説】

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恋愛小説(4)-8



「あんときの約束忘れるってどんだけよぉ!?ちーくん脳みそついとるん!?」
「ごめん。すっかり忘れてた。本当にごめん」
「反省してる?」
「反省してる」
「帰り私にイチゴパフェ、オゴってくれる?」
「ケーキもつけるよ」
「よし、許す!」
遠くの方でポツポツと明かりが灯り始めた。携帯電話を開くと、23時48分と表示されていた。確か花火をすると言っていたのは確か24時だから、そろそろ集まり始めているのかも知れない。
「もー、結局星見れへんかったやん」
「千明は」
「ん?」
「ずっと、僕の側にいてくれるんだろ?」
「うん」
「じゃあいいさ。来年また見に来ればいい」
「うん。そうやな」
遠くで木村さんの呼ぶ声が聞こえて、僕らはベンチを立った。葵ちゃんが少し不服そうな顔をしていて、僕はそれに気づいて右手を差し出した。
「葵ちゃんも、来年一緒に見よう」
「わ、私は」
「ダメかな?」
「ひーちゃん、その聞き方ずるいと思う」
「そうさ。僕は臆病な卑怯者だからね」




たまに打ち上げ花火を人生と例える人がいる。ひゅーと音を立てて上昇していき、ぱっと花開いたかと思うともう見えなくなっている、それが人生みたいで面白い、と。僕はそうは思わない。花火は花火だし、人生は人生だ、と僕はそう思う。僕の人生は何にも例えられない方向に、奇妙にその道を変えているけれど、それは花火の様に一瞬で消えてしまうのではなく、長い時間かけて生命を全うする花の方が近い。僕らは何かを思い、何かを考え、誰かを好きになって、失恋したりして生きている。その中には様々なストーリーがあって、それはその人自身が意味を決めるものだ。
「ちーくん、花火っていいなぁ?」
「そうだね」
「ひーちゃんは、しないの?」
「僕はほら、深層育ちだから、火を持つのとかはダメなんだ」
「煙草はもつのにな」
「でも私、ひーちゃんが煙草を吸う姿好きですよ?」
「む、あーちゃんより私の方がちーくんの煙草姿好きやもん」
「いくら千明先輩でもそれは譲れません。私の方が好きです!」
木村さんと田中が協力して、次々に打ち上げ花火をあげている。千明と葵ちゃんは、その手に飛沫をあげる花火を手にしていて、それが様々な色となり二人の顔を照らしていた。ドン、と大きな音がして空に花が開く。眩しくて儚い、その一瞬の光は、どこか遠い人に向けたメッセージにも見えなくはない。すぐに消えてしまうけれど、力強く、最大限に示して見せるその光を僕らは、いつもの様に暖かい雰囲気に包まれたまま見上げるのだった。



続く。


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