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【純愛 恋愛小説】

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恋愛小説(4)-7



「ちーーーくーーーん!!」
突然大きな声がして猛然と何かが突進してくるのが確認できた。闇に目を凝らすと、それはまぎれも無く千明だ。
「ちーくんひどいやん!?一緒に星見よって、約束したやんか!?」
「そんな約束したっけ?」
全く見に覚えがない約束だった。
「あ、ひどっ!!約束したやん、去年の夏季キャンで!」
「去年の夏季キャンプ……。あぁ!あれか!」
「あれや!一緒に星見てて、来年も一緒に見よなって言ったやん」




千明は典型的なロマンチストだった。いや、リアリストの面ももちろん多くあるのだが、今回に限り究極のロマンチズムを発揮していた。それも仕方のないことだと思う。空にこんなにも星の海が広がり、僕らはその海を一望出来る立場にいるのだから。
「ちーくん」
「ん?」
「ちーくん、やっぱ最近なんかあったやろ?」
「どうして?」
「だってちーくん見てると、なんか哀しくなってくるんやもん」
千明の声が泣きそうだったから、僕はドキッとした。驚きとは違う感情だった。ただ痛みを有するという点で、昼の時と同じだった。根源的なその痛みは、僕の心の柔らかい部分を巧みに攻撃し、執拗に離れようとしなかった。いったいこれは。千明を見るともう今にも泣き出しそうで、唇を噛み締めその端をふるふると震わせていた。痛みが、引かない。
「僕を見てると、哀しくなってくる?」
「うん。なんやしらんけど、ちーくんの辛そうなんみてると、私も辛なってくる」
「千明も?」
千明も、哀しくなっている。僕は?僕は悲しんでいるのだろうか。
「ちーくん、大丈夫やで?私は、ちーくんの側はなれへんから」
「千明は?」
「うん。他の誰がちーくんの側はなれても、私だけは絶対に離れへん。そりゃもうぶっとい鎖かなんかでぐるぐる巻きにしたみたいに、ぴったり張り付いといてあげるから」
「……ありがとう」
僕はほとんど泣き出しそうになっていた。やはり泣きたくなった理由はわからないけれど、それはもうどこにも行き場のない奔流となって、僕を襲っている。目頭が熱くなって、鼻の奥がむずむずした。目の前がジワリとにじんで、星がいびつに形を変えた。痛みはどんどん強く弱く脈打っている。そんな激しい波に晒されて僕は、心の底から涙を堪えた。
「あー、ちーくん泣かんといて。私がおるから」
「ありがとう。ありがとう」
「いつも側におるから、大丈夫やって。そんで来年もまた一緒に星見よ?」
「うん。約束しよう」
「うん。約束や」



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