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【純愛 恋愛小説】

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恋愛小説(3)-5



バーベキューは文句なしにおいしかった。いつまでも葵ちゃんと話しながら煙草を吸っている訳にもいかないので、僕は火の番をしてこれからを過ごす事に決めた。ジュージューと音を立てて肉が焼ける良いにおいが当たりに漂っている。それを囲む数人のサークルメンバーは、我先に異性にアプローチせんとあの手この手を試しているようだった。
「ほら、焼けたよお肉」
「わぁ、ありがとう!ふふっ、おいしいね?」
「喜んでもらえて、嬉しいよ」
まるでマンガの台詞の様な甘ったるさを披露しているのは、言うまでもなく木村田カップルだった。それを尻目に他のメンバーも必死の形相で異性の気を惹こうと思考錯誤をする。

少しその様を紹介しよう。例えば近くでお皿を抱えながら座り込む二組の男女。会話の端に「うふふ」「あはは」とこれまたマンガの様な笑い声が混じっている所を見ると、あながち良い雰囲気なのかも知れない。
「わぁ、凄い筋肉!武田くんって見かけによらず筋肉質だったんだね!?」
「そうかな?普通だと思うけど」
「そんなことないよ!ねぇねぇ、ちょっと触ってみても良い?」
「えぇ?うーん、まぁいいけど?」
「ホントー?やったー!わーすごーい、かたーい。なんかドキドキしちゃう〜」
「え?そ、そうかな〜?」
僕は男の方が今日の為に筋トレを欠かさずしていた事を知っていた。何の目的があって身体を鍛えているのだろうと、出発前まではそう思っていたのだが、こういう事だったのだ。完全無欠の阿呆臭さだった。

では僕の隣で缶チューハイを片手に語りあう男女はどうだろうか。野外で、お互い水着で、少し酔っている。なるほど、魅力的なシチュエーションなのは認めよう。
「あー、なんか酔って来ちゃったぁ」
「えぇ?大丈夫かい?」
「大丈夫じゃないかもぉ」
「お水でも飲むかい?」
「私、お水よりもっといいもの欲しいなぁ?」
「お水よりいいもの?」
「それはぁ……」
「それは……?」
「あっちの影で、貴方に介抱されたいなぁ?」
「え!?い、いいの!?」
「うん。ねぇいこ?」
……。
あきれてものも言えないとはこのことだった。そのくせそそくさと人影にない所に移動する足取りは、完璧に白面の時のそれと同じだったからどうしようもない。誘うほうも誘うほうだが、乗るほうも乗るほうだ。まぁ一汗かいたら、現実と向き合うこともできるだろう。

「ちーーーーーくん!!」
「わ!!」
いきなり後ろから目隠しをされた僕は、危うく手にもっていたコーラを落としそうになった。振り向くとそこには、満面の笑顔を広げた千明がいた。逆光で少し見えづらかったけど、僕の事をそう呼ぶのは千明しかありえなかった。
「びっくりするじゃないか。こぼしたらどうするんだよ」
「えー?だってそんな驚くと思ってなかったんやもん。なぁなぁそれよりさ?あの二人どこに行くんかな?」
ニヤニヤしながらそう言う千明の視線の先にいるのは、草むらへと入って行く、先ほど僕の隣で喜劇を広げていたカップルだった。適当な場所でも見つけたのかもしれない。
「さあね。ツチノコでも見つけたんじゃない」
「え!?ツチノコ!?ツチノコおんの!?」
「さあ?気になるなら聞いてきたら?」
「私は違うと思うなー。たぶんあの二人、やらしいことしに行くんだよ?」
千明にしては鋭い観察だった。正にあの二人はやらしい事をしにいったのだから。


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