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恋愛小説
【純愛 恋愛小説】

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恋愛小説(1)-18

「なんかさ、ちーくん」

「ん?」

「なんかああいうの、いいなぁ」

「ん?なんのこと?」

「あの影」

千明の手は冷たくて、小さかった。

「僕もそう思ってた」

「ホンマに?」

「うん、ホンマに」

「ははっ、ちーくんの関西弁、違和感あるなぁ」

千明が笑ったから、僕は嬉しかった。もうどうしようもなく、嬉しかった。

「ん?ホンマに?」

「あははっ、やめてー笑かさんといてー」










千明の部屋は暖かくて、千明がいれてくれたコーヒーはおいしかった。

「私なぁ?なんか木村さんに気にいってもらってるみたいやけど、なんかなぁ……、あの人苦手やねんなぁ」

「そうなんだ」

「うん。私、ちーくんのことは一目で好きになるってわかったけど、木村さんは一目で嫌いになるってわかったわ」

千明には予知能力があるのかもしれない。利己的で、哀しい予知だけど。

僕は千明のその言葉に、なにも言うことが出来なかった。なんと言えば千明を納得させることができるだろう。わかるはずもない。

「ちーくん、もしかして悩んでる?」

「ん?うん。まぁね、少なからずは」

「むぅー。だから言いたくなかってん」

千明はもういつもの千明だった。僕はそれが少し嬉しかったけど、どこかで少し寂しかった。ちょっとの時間で消えてしまう魔法。その魔法は、ファンタジー作品の様に万能ではなく、千明が思うとおりに扱えるわけでもなかったらしい。

「ちーくん。変に真面目やから、絶対こうなる思てた」

「こう、っていうのは?」

「だって、ちーくん、私の関係も切りたくないし、かといって、私の気持ちにも答えられんって思ってるやろ?」

「……うん」

「そんなん考えんでいいのに。私のわがままやねんから」

「でも」

「ええねん。私はちーくんといるのが幸せ、ちーくんは私といることで少なからずプラスに思ってくれてる。それでいいやん?だれも損はしいひんやん」

「千明は辛くないの?その、僕が曖昧な答えをだすことに関しては」

「そんなん、わかってたし」

コーヒーカップには熊の絵が書いてあった。眼が垂れた、かわいらしいキャラクターだ。一体この絵は誰が考えたのだろう。そんなこと知っても意味がないことを知りつつ、僕はそんなことを考える他、頭を使えなかった。


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