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「背徳の兄妹」
【兄妹相姦 官能小説】

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一章「血の軛」-2

育美の本棚にはたくさんの本が入っている。有○浩のいかにも詰まらなそうなタイトルの付いたライトノベルが、全巻揃っている。妹はこの作家のファンであった。しかし、純文学も多く、富岡多恵子、河野多惠子、大庭みな子、高橋たか子、津島佑子…。私の未だ読んだことのない女性作家たちの作品群が充実していた。私の父は、日本文学の研究者で、鹿児島のとある大学で講師をしている。私達兄妹は書物に囲まれて育ち、育美も私も、高校に入った頃から少しずつ本を読むようになった。
五年程前、私が大学に入って初めて書いた論文を育美は褒めてくれた。父はどうせ詰まらないだろうといって見向きもしなかったが、妹だけが私の論文を最後まで読み、感想をくれたのであった。いつも教授や父から怒鳴られ、喪失しかけていた自信を、優しい妹のお陰で少し取り戻すことができた。その論文はクリアファイルに入れて、今でも大切に保管してある。その時のことを思い出してにやけながら、私は床に転がった妹の学生鞄を物色しはじめた。ふと、教科書に混じって、カラフルなスケジュール帳があるのに気付いた。この時、私の興奮は頂点に達した。きっと、きっとこの中には、私の知らない育美の姿があるに違いない。私は、妹に近づきたい一心で、スケジュール帳を手に取った。スケジュール帳の釦を外す時、手が少し震えた。ページをめくるにつれ、具合が悪くなるのを感じた。
そこには、確かに私の知らない妹の姿があった。
スケジュール帳の見開きに貼られたプリクラに写る少女は、見知らぬ茶髪の男に肩を抱かれ、恥ずかしそうな顔で俯きながら笑っている。ああ、女の顔だと私は思った。妹のそのような表情を、私は未だ見たことが無かった。妹の細い身体をニタニタしながら抱き寄せる男は、如何にも不潔そうな雰囲気を醸していた。遊びだな、と私は直感的に思った。手帳の日付を遡り、妹がこの男と付き合ったのが夏休みの半ばであることが判った。また、男とデートをしたと思われる日付には、蛍光ペンでハートの印が囲ってあった。また、ハートが二重になっている箇所も幾つかあった。その意味を、知りたいような気もしたし、知りたくないような気もした。私は、自分の存在が砂のように崩れ落ちていくのを感じた。妹のふしだらな日々の上に、私の温い涙が頬を伝って垂れ落ちた。それから私は自分の部屋に篭り、ベッドに入り仰向けになった。やがて、私の可愛い妹は、あの男に抱かれるのだろう。そして、散々弄ばれたのち、やがて、捨てられてしまうのだろう。しかし、私にはそれを止める
ことすらできないのだ。そう思いながら、私はひどく滅入って天井を見上げた。大きな耳鳴りがした。すべてが物憂かった。
「私、大きくなったらお兄ちゃんと結婚する」
幼い頃に聞いた妹の声が幻聴となり、優しく耳に染み渡る。育美の口癖だった。この言葉を口にしなくなったのは、一体いつからであっただろう…?
私達兄妹は少しずつ、離れていった。当然の如く、妹が成長するにつれ、心の距離は広がっていく。二人で遊ぶ機会が殆ど無くなり、交わす会話も減っていった。しかし、私はその事実を決して認めようとせず、必死に埋め合わせしようと足掻いていた。私は、いつまでも、妹から離れることができなかった。そして今日、私の禁断の片思いに終止符が打たれたのである。もしかすると、これは妹離れの良い契機ではないだろうか?
育美。もうこれ以上、お前を好きになるのはやめよう。何をどうしたところで、お前は私のものになりやしないのだから。私は自分にそう言い聞かせながら、泣き疲れて眠りに付いた。

つづく


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