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沙恵の休日
【OL/お姉さん 官能小説】

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沙恵の休日-2

「さぁ入って…」
沙恵は周りの様子を気にしながら勇人を自分のマンションに招き入れた。
「すいません…ごめんなさい…」
勇人は済まなそうに謝りながら沙恵のマンションに入ってきた。
何かから逃げいる勇人には申し訳ないが…沙恵のテンションはかなり上がっていた。
どんな事情があるにせよ…あの海老原勇人が自分のマンションに来ているのだ。
テンションが上がらないはずがなかった。

「コーヒーでいいですか?」
緊張した面持ちの沙恵が勇人をリビングのソファに座らせた。
「そんな…気を使わないで下さい…」
勇人はかしこまっている。
「いえ…あの海老原さんこそ…くつろいで下さい」
時に厳しい態度で生徒たちと接して…怜にすら年上の女性として振舞える沙恵であったが…。
流石に堀が深くクールな顔つきの勇人を前にしては普段の通りとは行かなかった。
それは勇人も同じ事であった。
普段のスタジオなら初対面の相手とも礼節をわきまえながらも対等に話す事はできる。
だが今は見知らぬ女性の前であきらかに緊張している様だった。
そして…沙恵はこのあまりにも突拍子もない状況が不意におかしく思えてきた。
「ぐ…ぐふ…うふふふ」
勇人を目の前にして堪え切れずに吹き出してしまう沙恵。
「あ!あはっ」
つられた勇人も弾ける様な笑顔で笑いだした。
流石は売れっ子の俳優なだけの事はある。
沙恵はそんな思いで勇人の眩し過ぎる笑顔を見つめていた。

お互いにひとしきり笑い終えると…。
沙恵は勇人との距離が僅かに縮んだ様な気がしてきた。
「ねぇ…勇人くんって呼んでいいかしら?」
コーヒーの用意をしながら沙恵が尋ねた。
「構わないっすよ…お姉さんは?」
勇人も普段TVで目にする海老原勇人になってきた。
「私?私は沙恵よ」
沙恵は入れたてコーヒーを勇人の前に置きながらニッコリと微笑んだ。
「沙恵さん…ほんと迷惑かけてすいません」
勇人は沙恵に向かってきちっと頭を下げた。
「そんな!迷惑だなんて!」
沙恵の紛れもない本心であった。

だいぶ打ち解けてきた勇人は何で自分が追われていたのかのかを話しだした。
主演ドラマの爆発的ヒットで一躍時の人となった勇人。
当然の様にTV関係者はこの勇人人気を放ってはいなかった。
役者志望の勇人であったがその今時、珍しい無骨な感じがお茶の間に受けてバラエティ番組の仕事が多くなってきた。
最初は番宣も兼ねたバラエティ番組への出演をドラマの為と割り切っていた勇人であったが…。
所属事務所は手っ取り早く金になるバラエティタレントの路線で勇人を売っていこうとし始めた。
今日も何の番宣もない極普通のバラエティ番組出演の日であった。
「それで…飛び出しちゃったんだぁ」
優しげな教師の顔で話を聞く沙恵。
「えぇ…まぁ…」
勇人の顔は家出をした少年の様であった。
話を聞き終えて…。
沙恵は勇人の距離が益々縮まってゆくのを感じた。
いつも液晶画面の向こうで凛としているこの俳優も実に若者らしい悩みを抱えていたのだ。
沙恵は仕事に悩み…仕事を放棄してしまった若者を暖かくも厳しい瞳で見据えた。
「しっかりして…海老原勇人!」
思いがけない沙恵の力強い言葉にハッと顔を上げる勇人。
「あなたは逃げちゃダメよ…今は与えられた仕事をしっかりこなすの」
沙恵はそっとソファを立つと勇人の横に座り直した。
「けどさ…」
勇人が俯く。
「ファンはみんな…あなたの映画やドラマを見たがってるの。
その思いは必ず事務所の方に届くわ」
沙恵は優しく勇人の手を握った。
勇人が微かに潤んだ瞳に小さな笑みを浮かべて沙恵の顔を見つめた。


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