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葉月真琴の事件慕〜欅ホール殺人事件
【推理 推理小説】

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葉月真琴の事件慕〜欅ホール殺人事件-6

**――**

 テーブルを並べて簡易な受付を作成。続いてパンフレットをまとめる作業を行う。
 それが終ると、今度は舞台設営の手伝いに呼ばれる。
 ひな壇を並べたり、グランドピアノを運び入れたりと忙しい。
 舞台設営が終る頃になると徐々に演者達も到着し、控え室へ倉庫へと人の出入りがせわしくなる。
 欅ホールの裏舞台は上手と下手に別れており、重厚な扉で舞台と繋がっている。その脇にも扉があり、やはり重厚で開けるのは力がいる。
 真琴が舞台に譜面台を運ぼうとするも、片手で開けるのは至難の業。
「おいおい、危ないぞ」
 スタッフの一人が扉を開いて、止め具で固定する。
「ありがとうございます」
 真琴はお礼をするも、
「邦治君、幕間劇なんだけど……」
「はい、石塚さん!」
 とまた別のスタッフに呼び出され、のんびり話している暇も無い。
 澪はというとヘッドホンをつけた男性の指示に従い、ケーブルをもって舞台下を往復している。
「磯川さん、譜面台は……」
 もってくるようには言われたものの、どこへ置けばよいのかわからない。由真はそれに気付くと、床を指差す。その先には緑のテープでバッテンがされている。
「緑のテープで目張りされているから、そこに置いて。それが終ったら下手から椅子を六脚用意して。置く場所は白いテープで目張りしてあるから……」
「はい」
 真琴は譜面台を置くと、続いて下手側へと走った。

−:−

 あらかた準備が終ったところで小休止。真琴と澪は準備されていたペットボトルを受け取り、喉を潤す。
 リハーサルが始まったらしく、一郎と由真は険しい顔で舞台を見ている。
「コンサートなんだね。劇かと思った」
「えと、語りもあるみたい。ほとんど合唱みたいだけど……」
 隅っこでプログラムを見ながらおしゃべりを始める。今から十二時までに全三部からなる演目をリハーサルする。その幕間に舞台設営の準備のリハーサルもするのだが、それまでは肉体労働のスタッフは自由時間。なので、真琴は珍しそうに舞台の裏側を見ていた。
 華やかな表側とは裏腹に鉄筋むき出しの壁。蛍光灯のぼんやりとした光で照らされる通路は薄暗く、不気味なもの。真琴は薄ら寒さを覚えた後、上手側へと急いだ。

−:−

 リハーサルが始まって小一時間ほど経ったころ、上手側の扉がコンコンとノックされる。
「おはようございます……。すみません、道路が込んで……」
 扉が開くと同時に臙脂色の制服姿の女の子が入ってくる。
 ――相模原の制服だ。この子が……。
 真琴も今日の出演者は大体目を通しており、語り手兼歌い手の一人に相模原高校合唱部の子が居るのを覚えていた。
 五十嵐真帆。一郎の開いている声楽教室の生徒で、去年の市のコンクールで大賞を受賞した経歴の持ち主らしい。
 上半月の瞳は少女のあどけなさと大人になりきれていない青い魅力があり、赤いカチューシャで留められたセミロングの髪は、紙面よりも清楚な雰囲気が伝わってくる。
 はにかむ笑顔はえくぼがあり、おちょくるようなアヒル口が無性に視線を集中させる。
 パンフレットの写真にはお人形のように可愛らしい子がドレスアップして写っているが、実物はさらに魅力的だった。
 今もパンフレットと同じくカチューシャをしており、ストレートの髪は肩が揺れるたびになびく。
 上半月の瞳は目が合うだけでも上目遣いの媚びた視線に見えてしまい、気持ちのどこかがくすぐられる。
 スタイルこそ梓とどっこいどっこいだが、ややきつめのブラウスは凹凸を主張しており、薄く黄色いものが透けているのが困る。


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