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葉月真琴の事件慕〜欅ホール殺人事件
【推理 推理小説】

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葉月真琴の事件慕〜欅ホール殺人事件-27

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 上手の撤収作業を終ったところで四人は喫茶室で一息ついていた。
「はいどうぞ……」
 澪がおぼん片手に手際悪くお茶を配る。
「ちょっと、零さないでよ?」
 並々と注がれたお茶の表面が揺れるのを見て梓がおっかなびっくりに声を出す。
「うわわ、今声をかけないでよ、おっとっと……」
 なんとか無事テーブルに置くも、どうやって飲めばよいのかと首を傾げる梓。
「お口から向かえてください」
「何が口からよ……ばっかみたい」
 梓はそう言いつつ、そっと茶碗に唇をつけ小さく音を立てて啜る。
 真帆も澪からお茶を受け取り、梓に倣って唇を茶碗につける。
 まだ真帆は動揺を隠せないものの、だいぶ落ち着いてきたのがわかる。
「真帆、その気持ちはわかるけど……」
 言いかけて口を閉ざす。どう慰めの言葉を選ぼうにも言葉が見つからない。
 知り合いの死、それも身近な人の死を飲み込めるほど、現実は軽くはないことを、彼女は知っている。
「本当に……」
「真帆?」
「本当に事故なのかな……」
「なんで? 事故じゃないってどうして思うの?」
 先ほどから何度目だろうか。真帆はどうにも気になるところがあるらしく、事故であるということを疑うようだった。
「だって、それ以外に考えられるの? 鳥羽さんだっけ? あの人も見たって……」
「嘘かもしれないじゃない……」
「嘘って……。なら、鳥羽さんが殺したとでも言うの? どうして?」
「そうじゃないけど、でも、なんか信じられなくて……」
「真帆さんは誰かを疑ってるの?」
「え!?」
 真琴の言葉に澪と梓はぎょっとして彼を見返す。
「な、何言ってるのよ真琴、これはただの事故よ。そんな推理漫画みたいなこと……」
「そうよ真琴君。真帆もつまらないこと考えないで……」
「つまらなくない!」
 喫茶室全体に響く声に、その場に居た人々の視線が真帆に集まる。たいていは直ぐに自分達の会話に戻るが、彼女が主演女優と気付いた人は外のパトカーの存在とあわせて視線を送っていた。
「先生は……、だって……、そんなこと信じられるはずがないじゃない!」
 真帆に何か確証が在ってのことではない。梓は友人の肩を抱き、その揺れる気持ちを抱きしめる。
「うう……うう……」
「真帆……」
 しばらく嗚咽が続いたあと、真帆はゆっくりと座り、そのままテーブルに突っ伏す。
 梓はその隣に座り、肩を抱く代わりに髪を梳く。
「……、ごめん澪、僕ちょっと行ってくる……」
「え? どこに?」
「トイレ……」
「んもう……バカ」
 デリカシーの無い真琴の言葉にがっくりとしつつ、この重苦しい雰囲気の中を抜ける彼を羨ましそうに見送る澪だった……。


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