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葉月真琴の事件慕〜欅ホール殺人事件
【推理 推理小説】

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葉月真琴の事件慕〜欅ホール殺人事件-26

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 二人が上手に戻ってくると、撤収作業が行われていた。
 本来なら現場と繋がっていることもあり保存すべきなのだが、延滞料金のこともあり、由真の必死の交渉によって許可されたのだ。
 特に警察も事故と断定しており、現場と下手階段付近以外の作業を行って良いそうだ。
「ふぅ、まったくボランティアも楽じゃないわね……」
 澪と真琴は一階ロビーへと行き、テーブルの片付けをする。
 外には物々しい警察車両があるが、その事実から目を背けたいスタッフ達は黙々と仕事をこなしていた。

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 あらかた片付け終えたところで上手に戻る一行。
 石川も音響機器をしまい終えており、ゴミの処理と下手を残して完了となる。
 代表の代理ということで由真が警察に呼ばれており、残された面々は手持ち無沙汰に時計を見たりと暇を持て余す。
「……本当に事故よね」
 その静寂を破ったのは真帆の一言。
 一瞬殺気めいたどよめきが起こるが、皆口を閉ざす。
 梓は気落ち気味の友人の肩に手を置き、何か言いたげだが何もいえない。
「事故だと思う。というか、うん、俺が見たとき、他に誰も居なかったはずだし……」
 それに応えてなのか、邦治が口を開く。
 この場で唯一の目撃者である彼の言葉は絶対だろう。もちろん、嘘であるという可能性も無いわけではないが……。
「嘘よ……、だってなんで一郎さんが……、事故なんてありえないわ……。落下? なんでこんなところで落下なんて起こるのよ。小学生じゃあるまいし、二階から落ちたぐらいで人が死ぬわけないじゃない!」
 邦治の言葉を否定するのは久美の喚き声。事実は変わらないのだが、あたるべく矛先が無いことが、そのやり場の無い悲しみの逃げ場を奪っているのかもしれない。
 久美はただ泣き崩れ、話題の発端である真帆も嗚咽を漏らす。
「ただいま……って、どうしたの?」
 聴取を終えた由真が上手の様子にひと悶着あったと推測し、渋い顔になる。彼女もその胸中はかつての恋人の死で複雑であろうはず。気丈にスタッフに指示を出せるのは責任感ゆえだろう。
「警察はなんて?」
 石塚は彼女を見ずに言う。
「ええ、転落死でまず間違いないですって。台本を見ていて気付かず、バランスを崩しての転落。落ちた先で首の骨を折ってのこと。即死ではないけれど、助かる見込みも無いだって……バカにしてるわ……」
 つまらなそうに吐き出す由真だが、それで納まる道理もない。久美はすくっと立ち上がると、彼女を睨みつけた後、控え室へと入り、乱暴にドアを閉める。
「ふん、自分ばっかり不幸なヒロイン気取って……」
 金銭と愛情を伴う三角関係の頂点の一つが崩れたところで、その確執がなくなるはずもなく……。


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