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葉月真琴の事件慕〜欅ホール殺人事件
【推理 推理小説】

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葉月真琴の事件慕〜欅ホール殺人事件-25

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「……はい、第二幕が始まりまして、お昼を食べてからここに戻ったんですよ……。丁度三十分くらいかな、二時の。それで、俺だけがいて……、いや、確か磯川さんか、あの人が控え室にいました。話し声が聞こえましたから確かです」
「それが誰かはわかりますか?」
「ええと、わかりません。男の人の声でしたし、一郎さんじゃないですか? っていうか、ほとんどの人は今日初めて会ったばかりで、よく知らないんです」
「普段は……」
「ああ、ここでの手伝いは石塚さんに頼まれてで、毎回というわけじゃないんです」
「お昼の後、貴方はずっとここにいたんですか?」
「いえ、磯川さんに譜面台を運ぶように頼まれて、一度上手に行ったんです。戻ってきたら一郎さんが居て……そして……」
「それは何時頃のことですか?」
「えと、慌ててわからないんですけど、そんなに時間は経っていないはずなんです……。えと、三十分、いや、四十分くらいだったかな……」
「彼が柵を乗り越えて落ちたと……」
「はい。その、一瞬なんで、掴むとかそんなことは出来なくて……」
「で、救急の手配などが遅れたのは?」
「ああ、そうなんですよね。恥ずかしいことですが、最初目の前で起きたことが信じられなくて、あと、なんか変な感じがしたんです」
「変な感じ?」
「見られてるっていうか……いや、これは気のせいですね。とにかく人が落下することなんてそうそうおめにかかるものじゃないし、なんか足が竦んでしまって……」
「ようやく見に行ったと」
「はい。ですけど、その、そんなに高いところじゃないし、まさかその、死んでいるなんて思わなくて……」
「死んでいないと思うならすぐに救急に連絡すべきではないですか?」
「冷静になればそうなんですが、なんかこう、パニックになっていて……、磯川さんが降りてきて、それでボランティアの学生も来てからようやく電話しようとしたんですが、その頃にはもう遅いって言われて……」
「わかりました。また後で聞くことがありますが、一旦お戻りください」
「はい……」

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 階段上から聞き耳を立てていた真琴だが、警察官の頭が見えたところでさっと身を翻す。
「何してるのよ、まったく……」
 澪は控え室へと向かい、真帆の私物であろう物を探そうとする。真琴も慌ててそれを追った。

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 控え室では手話の赤坂が何かを探していたらしく、きょろきょろと見回している。
「どうかしましたか?」
「ああいえ、たいしたことじゃないんだけど、ウォークマンが見つからないのよ。あたしどこへやったかなって思って……」
「それはそれは……」
 真琴と澪は真帆の荷物をどかすと、一緒に探し始める。
「あ、ありました」
 テーブルの下を見ていた真琴が椅子の陰から見つけだす。
「ああ、ありがとう。これがないと困るのよ」
 赤坂は真琴に頭を下げると、壊れていないか再生しだす。
「……うん、大丈夫、壊れてないわ……?」
 録音されていたのは幹谷による「冴えない老猫」の朗読の終わり際であり、澪は「あの場面は笑った」と思い出し笑いをしている。
 ふと赤坂は首を傾げ「巻き戻し忘れてたかしら」と呟いていたが、すぐに巻き戻しボタンを押すと、帰り支度を始める。
「それじゃあお暇しようかな。えと、磯川さんはどちらに?」
「えと、上手の控え室にいると思います」
 赤坂はもう一度二人に会釈をすると、控え室を後にする。
 二人も真帆に荷物を届けるべく、控え室を出た……。


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