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葉月真琴の事件慕〜欅ホール殺人事件
【推理 推理小説】

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葉月真琴の事件慕〜欅ホール殺人事件-11

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 遅延金の説明のおかげでなかなか緊張感のあるリハーサルだった真琴は、精神的な疲労を抱えて上手へと戻る。
 すると、明らかにスタッフとは違う雰囲気の男性グループが見えた。
 彼らはチェックのシャツとジーパンという、演者ともスタッフとも言えない姿であり、手には花束を持っており、石塚に何か詰め寄っていた。
「ですから、困ります。ここはスタッフ以外立ち入り禁止です」
「堅いこといわないでよ。ぼくらは真帆ちゃんのファンで、花束贈ったら帰りますよ」
「だから、花束は私が届けますから、お引取りください」
 物腰丁寧な石塚だが、その額にはうっすら汗が滲んでおり、また先ほどから手に持ったボールペンを左に右にと意味もなく持ち換えている。
「どうかしたのかしら?」
「……あ、澪、真琴君」
 もう一人部外者がいるのだが、こちらは真帆の付き添いなので不問。二人は彼女の傍へと駆け寄ると、ことのいきさつを説明する。
 どうやら真帆のファンが花束を持って押しかけてきたそうだ。
 開場していないのにどこから入ってきたのかと不審に思うスタッフだが、真琴には心あたりがある。おそらく非常口からだろう。
 肝心の真帆はというと、ファンを見るや否や控え室へと引きこもったのだという。
「で、真帆はとりあえず、真琴君に用があるんだって……」
「僕に?」
 真琴は言われるままに控え室へと入る。どうせ腹立ち紛れの憂さ晴らしと思いながら……。

−:−

「あ、やっと来た。遅いってば……」
「ごめんなさい」
 控え室へ入ると開口一番怒られる。ただ、その苛立ちの原因も理解できているからか、受け流すことも容易。
「で、何か用ですか?」
 見ると彼女はミルクルを飲んでいたらしく、紙パックがしっかり開けられてストローがささっている。
「うん。君にしか頼めないことなんだけどね……」
 そういって笑う彼女は、パンフレットにある幼いアヒル口の可愛らしい真帆で……。


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