投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

女刑事‐石宮叶那
【OL/お姉さん 官能小説】

女刑事‐石宮叶那の最初へ 女刑事‐石宮叶那 4 女刑事‐石宮叶那 6 女刑事‐石宮叶那の最後へ

女刑事‐石宮叶那‐2-1

宣戦布告

幾多の飲み屋や風俗店が軒を連ねる街…蓮見町。
港南署の管轄の中で唯一最大の歓楽街であった。
その蓮見町の一角、メイン通りと裏通りを繋ぐ路地の角に立つ古ぼけた雑居ビルの前で叶那と信吾の乗る覆面パトカーが静かに停車した。
「まだ間に合う…信吾は残って」
叶那の切なる願いも信吾は笑って受け流している。
「下手した警察をクビになるかもしれないし…殺されるかもしれないの…ね…残って信吾、お願い」
叶那が初めて見せる弱さでもあった。
「俺…子供の頃、ゲームが大好きで、そのゲームみたいに大切な人を守って戦うんだ。
そう決めてたんですよ」
信吾が涼しげに笑って答えた。
そして信吾は真顔になると。
「俺の人生は愛する人の為にある」
力強く呟いた。
「信吾…」
叶那は一人の男の壮絶な決意を目の当たりにして、それ以上はもう何も言えなかった。

悲壮な決意の男と女は段ボールの散乱する階段を駆け上がった。
目指すはこのビルの三階の興亜会事務所。
もはや二人の後ろ髪を引くモノは何もなかった。

「んだ!てめら!」
興亜会事務所に勢い良く飛び込んだ叶那と信吾の前に二、三人のチンピラが立ち塞がった。
「権藤に会いに来た…」
チンピラたちを睨みつけながら叶那が低い声ではっきりと言い放った。
「ざけんな!…いて!いてぇぇぇ!」
蛮声と共に叶那に掴みかかったチンピラの腕を信吾が素早い動きで捻り上げる。
「やろう!」
遠巻きにしていたチンピラたちがおのれのダボシャツの懐に手を入れる。
「やめねぇか!」
事務所の奥の扉が開き三つ揃えをビシッと着こなしオールバックの頭髪に、部屋内にも関わらず濃いサングラスをかけた中年男がイカにもといった感じで姿を現した。
「権藤…」
叶那が絞り出す様にその名を呟く。
この軍用犬をイメージさせる中年男こそ権藤。
興亜会のトップに君臨する男だった。
叶那は垂れ落ちた前髪の隙間から刺す様な視線で権藤を睨みつける。
信吾も権藤を睨みつけながら腕をねじり上げていたチンピラを突き放す。
権藤はその剃刀の様な口元に冷淡な笑いを浮かべて叶那たちに歩み寄った。
「なに…刑事ドラマみたい事やってんだ?」
権藤がその容姿に違わぬ声で叶那たちを揶揄する。
「絶対にパクッてやるぞ!権藤!」
叶那は怒りに震えている。
「お札はあんのかよ!えっ?刑事さん」
権藤も憎らしいまで余裕だった。
「今日は私からの宣戦布告だよ!首洗って待ってろ!このフニャチン野郎!」
叶那は権藤に対して怒りをぶちまける。
「そのうち…ヒィヒィよがらして躾けてやるよ!メス犬!」
権藤も叶那を挑発してきた。
「いくぞ…信吾…」
叶那は権藤を睨みつけながら低く言った。
礼状がない以上はこれ以上の事は出来なかった。
悔しいが刑事である以上は仕方がなかった。
「そこの坊や…気をつけろよ!」
権藤が挑発の矛先を信吾に変えた。
「そんな女とつるんでると…おまえも岩村みたいに殺されちまうぜ!」
「この野郎!!」
カッとした信吾が権藤に掴みかかる。
「おら!殴ってみろよ!」
胸倉を掴まれた権藤は挑発的な笑みを浮かべ続けている。
「止めろ…信吾…おまえが殴る値打ちもない奴だ」
叶那は信吾に比べて冷静に信吾を止める。
ガシッ!
振り向き様に叶那の拳が権藤の顎を捉えた。
サングラスを飛ばしながら倒れ込む権藤。
「きさまぁぁぁ!」
「ぶっころすぞ!」
チンピラたちが叶那たちに殺到する。
「おもしれぇ!絶対に殺してやるからな!」
フラフラと立ち上がった権藤が凶悪な本性を剥き出しにする。
「やってみろよ…やってみろよ!」
まだ殴りかかろうとする叶那を押し留める信吾。
二人の刑事は揉み合う様にして興亜会の事務所を後にしていった。


女刑事‐石宮叶那の最初へ 女刑事‐石宮叶那 4 女刑事‐石宮叶那 6 女刑事‐石宮叶那の最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前