愛を知らない役者 (後編)-5
ソフィアの体が、びくり、と痙攣した。
ソフィアには悪いが、中性的な彼女の怯える顔は、なかなかに魅力的だった。
――しかし、自分を拒むことも、他の男に触らせることも、許せない。
「あいつ、きみのこと、触っていたでしょう?
きみの顔、引きつってたよ。
ごめんね、嫌なことを思い出させて。
だけどね…」
肩からずり下がったストールを直してやり、もう一度軽いキスをする。
「気付いて、ソフィー。
きみは今、嫌がっていない。
…『きみはもう、"永久の伴侶"を見付けてるんだ』」
----------
「…君が、ヴァンパイアだって!?ガルハーン!
しかも、"永久の伴侶"って…どういうことだ」
俺は、後ろ手でベッドに押さえ付けられたまま、少年を振り仰ぐ。
「やだな、おなかがすいて、頭が回らないの、ダニエル?」
「…ひっ!なっ、何を…!
…ぅっ…!」
「オレはね、元人間で、あるひとにヴァンパイアにされたの。
つまり、オレはそのひとの"永久の伴侶"」
「…ひっ、っあぁっ!
わかった、わかったから、手を止めてくれないか、ガルハーン…!」
いつの間にか、ガルハーンの片手は俺の肢体を這いまわり、くちびるは押し倒した俺の背や首筋や耳元をくすぐっていたのだ。
「だって、ダニエルの血に飢えた姿が、あまりにもいやらしかったから。
それにオレ、一応男妾だし?」
くすくすと笑う少年に、抵抗もできずに身悶えてしまう。
「…悪かった、もう、きみを食べたい、とは…、思わない、からっ…!
それよりっ、きみのヴァンパイアに、会わせてくれないか!?」