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狼さんも気をつけて?
【幼馴染 官能小説】

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狼さんも気をつけて?-10

 ふっくらとした唇をはむように口付けし、上顎を這い回り、喉元を甘く噛む。
 胸元で縮こまる手をとり、指を絡ませあう。細い指先もまた、それに応じて彼を握る。
 ジャージ、ブラ越しにでもその張りが分かる双丘に自らの胸板を押し付け、マシュマロのような弾力を楽しむ。
 彼女の手が彼の背中に爪を立てるが、それも甘えた牝のじゃれあう仕草にしかならない。
 キスの場所を喉元から胸元に移し、シャツの下へと手を潜りこませる。じっとりと汗ばみ、指が擽るたびにビクリと跳ねる。
「……や、やっぱりダメ……怖いもん」
 短く呟きの後、胸元にそっと手が触れる。痛み力も感じない。代わりに強い拒絶の意志が伝わってくる。
「な、なんで? なんでダメなのさ」
「……告ることも出来ないくせにエッチだけしたいの? そんな明、キライだもん……」
 下心を咎める声に反射的に身体が強張る。嫌な汗が顎を伝い、レンガ色のジャージに滴り、色濃いシミをつくる。
「そうじゃない、そんなんじゃないよ、俺は夢が好きだから……だから」
「……なら、伝えなきゃ……、夢、わかんないもん。そんな明じゃ、嫌だもん」
 はっきりとした拒絶に明は言葉を失う。同時に、溢れる気持ちが涙腺を刺激し、情けなくも彼の瞳を潤ませる。
「泣かないでよ……」
「泣いてない! 泣いてないよ……」
 しかし、想いを遂げることなく潰えた恋心は彼の頬を伝い、彼女の胸へと落ちる。
「雨みたい……」
 夢がポツリと呟く。
「そういえば、初めて一緒に帰った日も雨だったね……」
「あの日……、夢のことを好きになったんだ」
 鼻にかかったような情けない声にも関わらず、明は恥じることなく夢を見つめる。
「へー、どうして? 女の子と帰れたから?」
「違うよ……一緒に帰ったからかな、夢の臭いが残ってた。あぁ、温もりが残ってたっていうのかな? ……それでさ、その日はずっと夢と一緒にいた気になれたんだ」
「ふーん、そうなんだ。それじゃ好きになってもしょうがないね……こんな可愛い子と一晩一緒にいたんじゃ、好きにならない方がおかしいもん。うんうん……」
 仰々しく頷く夢に、思わず吹いてしまいそうになる明。もちろん、一晩添い寝してもらったわけではないのだが……。
「夢と一緒に帰る日って、傍に夢がいてくれる気になれるんだ。だから一緒に帰りたい」
 大分慎ましくなった希望だが、それに半比例するように心の隅にある隙間も大きくなる。
「でも、それじゃいつまでたっても気分だけだよ? 本当に一緒に居たくはないの?」
「一緒にいたいさ。帰り道だけじゃなくて、それ以外のときも、ずっと、ずっと……」
 声は徐々に小さくなるものの、半比例して夢を抱く腕に力が入る。
「痛いよ……」
「ゴメン……、でも……」
 さらに強まる抱擁に、夢は苦しそうにため息をつく。それでも拒む仕草は見せず、逆に胸元に回した手でシャツをきゅっと掴み、胸に埋もれるように寄り添う。
「……そうだ、いいこと思いついた。ね、今ここで告白の練習をしてみない?」
 胸元の夢が目を輝かせて呟く。その瞳には小悪魔的な紫の光が滲む気がするが……。
「なんだそれ……。でも、いつかは伝えなきゃって思ってるし……、分かったよ」
 急な提案に、明はどこか腑に落ちないものを感じつつも、現実ではないということもあってか、軽い気持で応じる。
「はい、それじゃ早速やってみましょう。ほら、立って立って!」
 絡み付くネットを振り払い、急かされるままマットの上に正座する。
 向かい合うと、まるでお見合いでもしているような気になり、変に畏まってしまう。しかも、いいだしっぺの夢が、なぜか照れた様に視線を倉庫の天井に泳がせる。
 あくまでもリハーサルであり、この夢は本物ではないはずなのだが?
 コホンと咳き込むこと数回、明はまっすぐに夢を見て口を開く。


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