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過ぎ行く時の中、残されるモノ
【ホラー その他小説】

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過ぎ行く時の中、残されるモノ-8

「右のほう。頭の……」
 そんなことないはずなのに、でも、言われてみるとだんだん痛くなる。
「そのあと、首をまた絞められた」
「え!?」
 一瞬、息が止まる。
 でも、なんか思い出す。
 誰かが僕の首を絞めている。
 男の手。
 とにかくじたばたした。
 そのとき別のほうに誰かいた?
 忠志だ。
 アイツの姿があったんだ。
 誰かがしゃべるを振り下ろして……!?
 でも、それならなんで僕はこうして生きているの?
 頭だって……!?
 右手で頭を触ると、ぬるっとした温かいものに触れた。
 よくみると、それはどす黒く、鉄くささを放っており、とめどなく溢れてきて頬を伝う。
「うわぁ!? な、な、なんで? なんで血が! 僕は、だって!」
「車に轢かれた」
 隆を見ようとしたけど、溢れてきた血で視界が閉ざされる。
「落ち着いて聞いてくれ。もうすぐ出る方法を教えることができる」
「な、なにが? なんですぐに教えられないの……?」
「多分だけど、和義は下校途中に車に轢かれたんだ。そして、轢いた奴らに連れて行かれて、別の、多分、廃工場か何かの近く、人目につかない場所に連れて行かれたんだと思う」
「え? え?」
 目が痛くて開くこともできない。手で血を拭いながら、隆の言葉に耳を傾ける。
「そして、首を絞められて、抵抗して、頭を殴られてから、また首を絞められて殺された」
「殺された!?」
 隆の言葉に、僕は叫んだ。
 だって、殺されたっていうなら、死んでるってことでしょ? なら、なんで僕は生きてるのさ!?
「死んだんだよ。和義も……」
「死んだ? どういうことさ? だって僕は!」
 ようやく目が見えるようになって、僕は隆のことを見返した。
 けど……。
「わぁ!」
 隆の顔の左側、最初見たときと同じように、目をたんこぶのようなものがふさいで、口の左側が変に広くなっていた。
「忠志って奴も多分、死んでここに来たんだよ。僕と一緒さ」
「忠志も死んでここに来た? 隆と一緒? どういう……」
「僕も忠志もアイツらってことかな? そして、和義もいまからその仲間になるんだ」
「アイツら? やっぱり君も……」
 恐怖を感じるべきなんだと思う。けど、でも、なんかそれ以上にわからないどころか奇妙すぎて怖さが追いつかない。

 ――隆は僕を騙していたの? 僕をアイツらの仲間にするため? 帰る方法を教えてくれるはずじゃないの?

「……おくとなの……ううあえ? あえう……を、おいえて……あいお?」
 いろいろ言いたかったけど、首を絞められるような息苦しさで、言葉にならない。
「後ろ。ようやく見つかった」
「げ?」
 ウシガエルみたいな声を出しながら、僕は振り返った。
 そこには誰かが倒れていた。
 ランドセルがあって、ランドセルから三十センチの定規がはみ出して、夏休みの工作らしきものを持っているのは……。
「おぐ……?」
「そう、和義だ……」
 立ち上がる気力の無い僕は、這い蹲りながらそれに近寄る。
 右足が、間接が一つ増えたように曲がっていて、腰の辺りに黒い汚れがついている。頭部にはへこみこそないけれど、血が流れた跡がある。
 そして、その顔は毎日鏡で見ていた僕の顔だった。


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