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最後の夜
【女性向け 官能小説】

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最後の夜・前編-9

ロイ……
心の中でそっと呼んだ。

その声が届いたのか、ロイが汗を拭いながらふとこちらを見上げた。

ロイ…!!

ロイは一瞬ふっと微笑んで、「あとで」と口だけ動かした。
ガーネットがウンと頷くのを確認してまた手入れに戻った。


アンはドレスの箱をテーブルの上に置いて、ガーネットが立っている隣の窓からカーテンを直す振りをして外を盗み見た。

やっぱりロイだ…

幼い頃から見てきたからロイの事を好きなのはなんとなく気づいていた。
でも人を好きになる気持ちは止められないし、何も言わなかったけど、いつからか四六時中窓の外を見るようになった。

ロイの方も仕事中に姫様の部屋の下にさしかかると、必ず上を見上げ姿を捜しているようだった。

今まではひっそりとしていたのに、見る人が見れば二人の想いに気づいてしまうんじゃないかと心配になる。

それに、姫様の着替えを手伝っていた時に見てしまった。
姫様の胸に紅い痕がついていたのを…

「虫刺されかしら?」ととぼけていたけど、あれは間違いなくキスマーク…
それからも、それとなく着替えの時に身体を見ていたけど、その1回だけだった。

相手はロイしか考えられない…
問いただすべきなのだろうけど、全身でロイを求めているのにひた隠している姫様を見ていると、とても言えない。

結婚することはもう決まっているのだし、密かに見守ろうと決めた。


「姫様…もうすぐ結婚ですね…」

「…そうね」

「いいんですか?本当に」

「なに言ってるの。良いも悪いもないのよ」

「…姫様…」

「楽しいかしら、結婚するって」

「ルーク様と結婚したら、きっと素敵なドレスや宝石を買ってくれますよ!きっと楽しいですよ!あ〜羨ましい!!」

励ますように明るく言った。

「そんなもの……アン、私はアンが羨ましい…好きな人と結婚できたんだもの…」

窓の外を見ながらつぶやいた。

「姫様…」

アンは自分の事のように胸が苦しかった。





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