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誰かいるの?
【ホラー その他小説】

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誰かいるの?-2

何かが倒れたりするのは建物が傾いているのかもしれない。
暗転した画面に写るのは自分だけでそれ以外は気のせいだ。と。
それにしても「命を大事にする」か。
メル友と知り合うきっかけになったのはメル友が掲示板に書いた「食事とは栄養を補充することではなく命を取り込むことである。」である。
俺はそれに共感して、食べ物をおもちゃにするバラエティ番組への不満を書き綴ったことからメル友との付き合いが始まった。
直接メールをするようになって、彼(彼女?)の代わった癖というか習慣を教えてもらった。
それはいつもちょっとしたことでも「ありがとう」と言うのである。
たとえば探しているのになかなか見つからないのに、ふとしたことで見つかると誰に言うでもなく「ありがとう」という。
ほかにも転んでも怪我をしなかったときとか。些細なことでもラッキーで済まさず自分の力だけでなく何かが手伝ってくれたと感謝するそうだ。
そう考えるとメル友は霊とかを信じているのか?

そう思いながらできるだけ気にしない生活を続ける。
そのうち霊が居なくなったのか、それとも自分が鈍くなったのか気にならなくなったのか気づかなくなった。

そして霊に怯えていたことすら忘れていた。

ある日、俺は仕事先で因縁をつけられた。
俺のミスではない。相手がミスを俺に擦り付けようとしてきたのである。
何の落ち度もない証拠と相手のミスの根拠をA4用紙2枚にまとめて相手の会社に提出したところ、相手の会社側から謝罪があった。が、本人からは何の音沙汰もなかった。
後日営業でその会社に訪れたとき、こそっと平社員に聞いてみるとなんでもそのトラブルでの謝罪について上司に逆らって自分の居場所がなくなり退職したそうだ。元から自意識が強くて問題のある社員だったが、実際に仕事を任せてみたらこの有様だったという。
俺としてはおかげで契約が有利に進んだのだから「気にしないでください」と言えるが、会社側としては痛い出来事だったろう。
仕事を終えてアパートに戻る。
鍵束を取り出してドアの鍵を探していると家の中から何かが暴れる音がして、その音がドアに迫り、ドアが乱暴に内側から開けられ大人が悲鳴を上げながら飛び出し壁にぶつかった。
それは俺に因縁をつけた元社員だった。
そいつは俺を見て、家の中に視線を走らせ、また俺を見ると世にも情けない言葉にならない声を上げて道路へ飛び出すと小型トラックに跳ね飛ばされた。
ちょうど停車しようと速度を落としていたので死にはしなかったが気を失ったままだったので俺の携帯で警察に電話をした。

その後、到着したパトカーと救急車。元社員は意識を戻さなかったので病院へ直行。俺は事情聴取でありのままを説明した。
状況では逆恨みの意趣返しで部屋に侵入して窃盗を働こうとしたか俺の帰りを待って襲撃しようとしたのだろう。
しかし、何かに驚いて飛び出してきた。
お巡りさんと一緒に部屋に入る。
元から散らかっている部屋だがさらに散らかされていた。
お巡りさんは「彼は何におびえたのだろう」と首を傾げると俺は「お化けでも見たんですかね?」と答えた。
「出るの?」お巡りさんの興味津々な顔に俺は何となくムッと感じたが「別に…」とだけ答えた。
お巡りさんが帰るころに、俺は霊に怯えていたことを思い出した。

興味本位や荒らすつもりで接すれば相手に不愉快な思いをさせる。か。

お巡りさんが去って玄関の鍵を閉めて室内を振り返った。
そこは誰も居ない散らかった空間だ。
そして俺は誰に言うでもなく「ありがとう」と言った。
さて、大家に連絡して鍵の交換をお願いして部屋を片すにしても今夜は何を食べようかな。

終わり。


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