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【片思い 恋愛小説】

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春B+3.5-4

『あなたに見つかった時点で、行くのやめようと思ったから』


そう言ったあの顔は、業務用の笑顔だった。
それは仕事中に話したから?
それとも、あれは…

「…ウソ?」
「あ?」

考え過ぎかもしれない。
俺が自分に都合良く解釈してるだけなのかも。
…そうだよ、都合良く考え過ぎだろ。

小松さんに言われたから俺をふった?
俺の為に俺をふった?
本当は、ふりたくなかった?
そんな事言ったらまるで睦月さんが俺を…

そんなわけない。
そんなわけない。
そんなわけない。

だけど――


その後に必ず出てくる"だけど"という可能性をどうしても捨てたくなかった。

もしあの言葉がウソなら、睦月さんはお昼休みあそこにいる。
俺達二人だけのものだった、あの場所に―――





翌日、お昼休み。
ほとんどの社員が休憩に入ったのを見計らってから行動した。
ここんとこ毎日のように事務所の新入社員に捕まるんだ。あいつに見つかったら計画が台無しだ。

あれからずっと使わなかった屋上へ続く階段を、音をたてないようにゆっくり静かに上がる。
いるかどうかも分からない人の為にこそこそしてる自分が馬鹿みたいに思えるけど、でもきちんと確認したくて。

あの日の睦月さんの言葉は本心なのか、ウソなのか。
ウソだとしたら、何でウソをついたのか。
小松さんに言われたからなのか、自分の意思なのか。

俺の事をどう思ってるのか…

ドアを開けると、春の風が無風だった空間に一気に流れ込んできた。
眩しくて一瞬目を細めたけど、

「…」

すぐに視界に飛び込んできた数日前と変わらないその光景に思わず口元が緩んだ。

「初めて見ます、その顔」

驚いたのか、口がポカンと開いてる。
いつもの顔とはえらい違い。

「やっぱ睦月さん、ウソつき」
「…へ」
「もうここには来ないって言ったのに」

ウソつき。
睦月さんはずっとここにいたんだ。
毎日一人で…


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