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【片思い 恋愛小説】

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春B+3.5-2

「小松さん、睦月さんに何か言いました?」
「何かって?」
「余計な事ですよ」
「よけぇ――?」
「小松さん!」

必要以上の大声に、周りで作業をしていた他の従業員が一斉にこっちを見た。

「声がでけーよ」
「じゃあちゃんと話して下さい。睦月さんに何か言ったんですか!?」
「…」

小松さんは少し黙って考えるような素振りを見せて、それから場所を変えようと俺を工場裏の廃材置き場に誘った。


「俺が頼んだの。睦月に、お前の事をふってくれって」
「…っ」
「言っとくけど俺はお前の為を思って――」
「何が俺の為だよ!あれか!?嫁が実家に帰った腹癒せに俺を不幸にしようってか!?」
「バカやろ…っ、うちの嫁が帰ってんのは出産の為だ!里帰り出産!腹癒せなんかするか!!」
「じゃあ何だよ!幸せなのは自分一人で十分とか思う為か!?」
「んな事思うか!!俺はお前の幸せを願ってだな、」
「俺の幸せだぁ?」

途中から敬語を使う事も忘れるくらい頭に血が上ってしまった。

俺をふるように頼むってどーゆう神経してんだよ!
何が俺を思ってだ!
恩着せがましい言い方しやがって、自分の好き嫌いに俺を巻き込んでんじゃねぇよ!

「大体小松さんはお節介なんすよ!俺が誰を好きになろうが関係ないでしょうが!」
「ほっとけないんだからしょうがないだろ!」
「俺はあんたの子供じゃねえぞ!」
「違うって、お前はー…」
「俺がなんだ」

完全なタメ口に小松さんは怒るわけでもない。少しの無言の後、照れ臭そうに呟いた。

「お前とうちの嫁、似てるから…」
「…………気色悪っ」
「いや、気色悪って何だよ!」

気色悪いだろ。
最近人に言われた言葉の中でダントツに不快だ。

「何で引くんだよ!」
「目の前でおっさんがもじもじしてたら誰だって引くわ!!てか、俺と嫁を重ねるな!」
「おっさ…っ、いや、重ねてるとかじゃなくて、あー…、何て言ったら伝わるんだよ…、いや、とにかく睦月はなぁっ、大ウソつきなんだぞ!?」
「それがどうしたんですか!」
「あいつがいつも見せてる顔は偽者で、本性は相当どす黒いんだからな!」
「だから、それがどうしたんですかって!」
「だから―…」
「何すか」
「え、お前…知ってんの?」
「睦月さんの性格が作り物な事くらい知ってます」
「…………マジで?」

俺の発言に相当驚いたのか、今度は目を丸くして静かに呟く。
今日何回目のマジで?だ。
何なんだよ、この人…


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