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あべ☆ちほ
【少年/少女 恋愛小説】

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あべ☆ちほ-19







この時期の夕方はないも同じだ。

時計の短針が右下に傾きだしたころにはもう陽が暮れ始め、祭りの撤去作業のようなそっけないスピードで太陽はしまいこまれてしまう。

けど、今日はクリスマス・イブ。だれも暮れゆく太陽なんて惜しまない。だれもがツリーのライトアップを待ち望んでいるのだ。

駅前の広場には大きなツリーがあって、何千個ものイルミネーションがおしゃれスィーツの季節の果物みたいにふんだんに飾られている。そいつが日没と同時に点灯される。街は幻想的な灯りに包まれる。

バッツン。

スピーカーにノイズが走りクリスマスソングが始まる。一曲目は「Happy Xmas (War Is Over)」。

ジョンとヨーコがクリスマスをささやき合う。[Happy Xmas,Yo-ko][Happy Xmas,Jhon]

恋人たちはお互いのことを見つめ合う。

ジョンと子供たちは歌う。



あなたが望めば戦争は終わる。



これは、途中から僕の想像。

千穂と僕はその場にいなかったから。

人込みは酔うという理由で駅前を離れた僕らは、そのままふらふらと歩いて旧市街の工場区の方へ来た。

日が完全に暮れた頃、街のほうで歓声が上がるのが聴こえた。

「奇跡でも起こったのかな」

「クリスマスだし、そうかも」

工場はクリスマスには全て休みで、それは死に絶えた大きな生き物の群れみたいに見えた。

僕らはほとんど話さなかった。

もちろん何でも話せた。話題だって豊富にあった。でも話さなかった。それが、素敵だったからだ。

閉まってる工場の門の手前までちょこちょこと行っては立ち止まりまた次の工場の門へちょこちょこと千穂は歩いた。僕はそれに少し遅れる形でついていった。

7、8軒目の工場だ。

門の右と左の噛み合わせが悪く、ちょうど人一人分が入れるだけのスペースが開いていた。

千穂は迷わずそこに入り込んだ。僕も続いた。

もちろん工場の入り口は閉まってたから、僕らは敷地内への潜入に成功しただけだ。けれどそれでよかった。

別に目的なんて何もなかったから。

そのまま工場をぐるりと周る。ポチポチとついてる窓にはほこりが溜まっていて中は覗き込めない。

裏側の駐車場に来たとき、僕と千穂はとても自然に手を繋いでいた。その部分から溶けて一つの物体になってしまうほど自然に。


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