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姉貴先輩
【青春 恋愛小説】

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姉貴先輩-1

手塚優・・・俺の憧れの先輩。
高校生になり、初めてのバイト先で出会った。
・・・第一印象は、いいとは言えなかった。

「おすすめのメニューは事前にきっちり覚えときなよ」

客に聞かれて答えられず、固まってたところをすかさず笑顔で流暢に答えた手塚先輩。
その直後に厨房に連れていかれ釘を刺された。
自分が悪いのを棚に上げてその時は先輩に心の中で悪口を言ったよな・・・

(何だよ・・・まだ入ってほんの少しだから仕方ないじゃん)

それから手塚先輩は事あるごとに俺を注意してきて、鬱陶しく感じていた。
入ってきた客にはお冷やを早く出せとか、汚れに気付いたらすぐ掃除しなさいとか。

・・・正直、嫌いだった。
顔を見るどころか、今日来てるのかと考えるだけで憂鬱だった。
今日も先輩に怒られまくり、やっとバイトが終わった。いつも以上に疲れたぜ・・・

「怖かったな手塚先輩」
「本当だぜ。俺らと歳も変わらないのに堂々としてるよな」
「社員の人と話してたけど、まだ一年みたいだぜ」

・・・は?俺と同い年??
嘘だ、あの立ち振舞いで一年生かよ?

「兄弟が多いんだって。男兄弟で育ったから、きっと兄貴に負けない様に勝ち気になったんだろ」

友達の話で妙に納得してしまった。言われてみたら結構負けず嫌いな人だな。
そんな話を聞いても、嫌いなものは嫌いだ。そう思っていた。

今、この瞬間までは・・・


「動き良くなってきたね。その調子だよ」


別に意識した訳でもなく、いつもと同じメニューを客席に運んで帰ってきた時だ。
初めて見た気がする、手塚先輩の笑顔。

「え、え?あ、あの、ありがとうございます!」
「声おっきいよ、お客さんに聞こえる」

早口で踵を返し、活発的なショートの茶髪がふわりと膨らむ。
あの手塚先輩が俺を褒めてくれた。いつも俺を頼りなさそうに見てた先輩が。
・・・笑うとあんな可愛いんだ。ドキドキしてきたぞ。

その日の俺はまるで別人の様に張り切ってしまった。
普段嫌々やってる皿洗いやゴミ出しも率先してやり、ついにはトイレ掃除までしてしまった。


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