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【片思い 恋愛小説】

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春2.5-3

初々しい奴って嫌い。
目が輝いてる奴も嫌い。
押しの強い奴も嫌い。
あたしはこいつが気に食わない。

「あのね、あたしは――…」

言いかけて、口を止めた。

本性を知られた相手だもん、汚い言葉で傷付けるくらい簡単にできる筈だった。
でも、改めてこいつの表情を見たら何も言えなくなった。だってその顔ときたら、見た事もないくらい真剣でよく見たら手だって震えてて…

「あたしは、何ですか?」

返事を急かす声にハッとした。
そしてすぐに自分に言い聞かす。

あたしは冷めてて動じない女。


「手取りがあたしより多くなってから出直して来い」
「俺入社仕立てですよ!いつになるんすか!?」
「さあね」

しっしっと手をどかせて、家路を急いだ。

あいつといると疲れる。
好きとか、あんな風に言わないでよ。
聞き慣れない言葉のせいで調子狂うじゃんか…




翌日も、事務所の新入社員はあたしの神経を逆撫でする。

「すいませぇん、ここって―――」

はあぁっ!?
昨日と全く同じ事聞いてくるんじゃねぇよ、バカ女が!

「これはね、昨日も言ったように…」
「えーっ、昨日言いました?」

…殴りてぇ。
イライラが顔に出てきそう。
我慢我慢。
あたしは優しくて仕事のできる女。
あたしは優しくて仕事のできる女。
あたしは優しくて仕事のできる―――…
………って限界があるわっ!!!!

何なの、あの子。
バカなの?
ねぇ、バカなの?
毎日毎日同じ事ばっか質問して覚える気あんの?
フォローとか言って結局あたしが二人分の仕事してんじゃん!

あ―――――、疲れる!

早くお昼休みになれ。
日向ぼっこしながら何も考えないでうとうとするんだ。




お昼休みの屋上はあたしの唯一の心休まる場所。
一人でマイペースにご飯を食べてただぼーっと時間が過ぎるのを待つだけのひと時が好き。

だったのに!


「睦月さーん、お昼一緒に食べませんか?」
「…ちっ」

永沢だ。

この野郎、あたしがここでお昼を食べると知ったその日から必ず屋上にコンビニの袋をぶら下げて現れるようになった。


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