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飴玉
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飴玉-1

「はあ〜〜〜〜。暑い。だり〜〜。やってらんね〜〜〜」

やる気の無さと疲労の混じったヘドロの様な溜息を吐き出す。
飛び込み営業なんてやってられんよなぁ。教材なんて誰が買うんだよ。

日本人はそんなに勉強好きじゃないという事が、この仕事を始めてから分かった。
あと上手いサボり方・・・いやいや息抜きの仕方だ。
きっちりサボってる筈なのに体重が増えないのは、一日中歩き回ってるせいかな。
やっぱり脂肪を燃やすんだな。歩くっていうのは。

甘かったな。
昔から人と話すのはわりと好きだった、ってだけで選んだ。
スーツを着る仕事なのに何でこんなキツいんだよ。やってらんないぜ。

・・・ついさっきもやってらんないぜって呟いたか。まるで呼吸の如く呟きまくってる。
最初のうちは色々な場所に行けるから楽しみにしていた。
実際はたった1週間で飽きちまったけど。

ベンチに座り、膝に腕をついて前屈みになりながら道行く人達を眺めていた。
俺と同じく営業らしき電話で話しながら歩くリーマン
周りに構わず下らない話をし、笑い声を上げる数人の学生
携帯に夢中で自転車にぶつかりそうになる女子高生

・・・なんだか、皆が自信にあふれている様に見える。
少なくともいまの俺よりははっきりした目的を持って生きている、そう感じてしまう。

「何を考えてんだか・・・」

これから会話を交わす事もない赤の他人と自分を比べるなんて、悩みを拗らせ過ぎだ。


「はい」


突然差し出された、小さな手に乗った白い球状のもの。
目線を上げるとその小さな手の持ち主がにこっと笑った。
小学生になりたてくらいだろうか。

いかんな、まだ幼いうちから学校をさぼるとは。
俺みたいなダメな大人になっちまうぞ。子供は真面目に勉強するべきだ。


「あげる」


・・・見ず知らずの人に無闇に話し掛けるとは危うい子だな。
いったい親はどこにいるんだ、こんなに小さな子供をほったらかしにして。
あげる、というのは手に乗せた白いものか?

「そんな抜け殻みたいな顔して、毎日がつまらないんだよね。だから食べなよ」

な・・・何?いまなんと言いましたこのお子様?!
・・・その言葉、だから食えよの部分を抜かせばたまに会う親に言われるのと同じだ。

「言われるの嫌かもしれないけど、頑張ってね。立ち止まるのは次にもっと大きく飛び出す為に必要なんだから」

それだけ言うと子供は踵を返し、去っていった。
頑張れ、と言われるのは本当に嫌だった。毎日頑張ってるのに・・・もう言うなよって。

もらったものは、懐かしいミルクの味がする甘ったるい飴玉だった。


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