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【イムラヴァ】
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【イムラヴァ:一部】八章:クラナド-5

「あなた方が誰であれ、すぐにここから立ち去った方がいい。それも出来るだけ早い内に。悪魔がこのあたりの村で暴れてるという話を聞いていませんか?明日には、討伐隊がコルデン城を出ます。そうしたら、森は戦場になり、怪しい者はすべて殺されてしまうでしょう。ただでさえ、トルヘアはそういう、見慣れないものに敏感ですから……私もコルデン城に住まう以上、王の名の下、討伐隊に加わらなくてはいけないんです」広間がざわめき、「ついに国教が動き出したか」というつぶやきが聞こえた。それを制するように、ロイドは言った。

「我々は、悪魔ではない。しかし、ある意味では、彼らと同じ故郷を持って居ると言っても良いかもしれん」彼はゆっくりと言った。

「じゃあ、あなた方はやっぱりエレンの……」アランは、ついさっき自分で自分を戒めたことを綺麗さっぱり忘れた。ロイドの瞳には、依然楽しげな輝きがある。

「あなたたちは、いったい何者なんですか?」アランは前にのめるあまり、炎に近づきすぎて危うく髪を焦がしそうになった。「獣、それとも人間?教会の奴らが言ってましたけど、もしかしたら、あなた方が悪魔ですか?それに、どうしてこの森に居るんです?」

ロイドは、口に蓄えたひげに手をやって、考え込んだ。

「ふむ、どの質問から答えるのが良いかな」アランは、自分が質問しすぎたことに気がついて、にわかに赤くなった。

「まず、あなたがおっしゃりたいのは、ハーディの様な者達のことでしょうな」アランはうなずくと、彼は話を続けた。「彼らは、見た目には獣のように見えるが、歴とした人間じゃ。人間のように見えるわしらも、彼らと何も変わらぬ。エレンに生まれた者、エレンの血を継ぐ者は自らをクラナドと呼ぶ。祖霊たちの血脈を継ぐ氏族(クラン)の集まり、それをクラナドと言い、特定の氏族に属するものは、全員がクラナドじゃ。ハーディも、犬の霊を祖先に持っておる犬氏族じゃ。だが、このような姿をしているものは特に、霊に愛されたものとして特別な名で呼ばれる――シーとな。」

「妖精(シー)!じゃあ、彼らが」アランは、目を丸くして周りの者達を見た。おとぎ話や伝説に聞いた妖精が、今自分の目の前に立っているのだ。想像とは違う部分もある事はあった。妖精は、常にきらきらと輝いていて、もう少し――魔法的な感じがすると思っていたから。それでも、彼女の心は喜びと感動で一杯だった。小さい頃、妖精との邂逅を求めて森を歩き回ったこともあった。結局くたびれて帰るしかなかったが。それが、今頃になって叶うとは。妖精。霊に愛された者。

「霊、とは何ですか?」アランが言うと、老人は再び髭に手をやった。

「説明するのは難しいのう。何しろ、霊たちが顧みられなくなってずいぶんになる。そうさな、こう言えばわかりやすいかも知れぬ。霊は、あらゆる自然に宿っていると」

 今度はアランが考え込む番だった。霊が自然に宿る?

「あらゆる自然と言うことは、木とか、水とか?」

「生きとし生けるもの全てに」ロイドは両手を広げた。両の手のひらの間に、どれほどの自然があるのか示そうとして。「大気、虫、風、炎に地面、森の木々はもちろん、枝に憩う小鳥や物陰に潜む獣。言葉にして並べることは出来ん、余りに多すぎてな。星の数にも等しい程多くの霊が、この世にはあるのじゃ」彼は、その言葉につられて星を見上げるアランの横顔を興味深そうに見つめた。そんなことには築かず、アランは再び熱心な表情でロイドに聞いた。


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