DOLLHOUSEU 3-5
「泣くなよ」
「うん…」
ざく。
腕が自由になると、リカはシーツをつかみ、自分自身を抱きしめるように肩を抱いてそれにくるまった。
俺はそのまま足首に巻かれた紐に取りかかった。
手首よりは緩んでいて、切りやすかった。
足首の方が緩んでいる理由。それを考えるとまた苛ついてしまう。
痣も手首よりはるかに酷い。
カチカチカチ。
切り終わって、刃を収めていると、シーツを纏ったリカが立ち上がった。
よろよろとした足取りでユリの元に座り込む。
「ユリさん…よかった。温かい…」
ユリのほほを愛おしそうに触っている。
「コレ…」
血だらけの額を手のひらでぬぐいながら、迷子の子犬のような顔で俺を見る。
「ああ、もう。わかったから触るな。血は止ってるから問題ねえよ。ヘタに触ると開いちまう」
俺はユリを抱え上げて、リカのベットに横たえた。
リカの服の切れ端で、傷口は触らないように顔の血をぬぐってやった。
薬とかの場所は知らないし、ユリが起きてからでもいいだろう。
「これでいいか?」
「うん」
リカがようやく微笑んだ。
ベットに腰掛けて、いつまでも離れようとしないリカ。
「お前はコッチだ」
俺はリカを抱え上げた。
「あ。」
手放してしまったシーツをしばらくみていたが、やがて俺の首に腕を回してきた。
やわらかな曲線が俺の胸に添う。
部屋を出る。
階段下にもう男はいなかった。
浴室に入って中を覗くと、湯が張ってあった。
ユリはあの状態だし、湯が抜かれているかとも思ったのだが。
おそらく、あの男と寝た後でユリが自分で入るつもりだったのだろう。
棚を開けるとバスタオルもバスローブも置いてあった。
脱衣所にリカを下ろして俺は服を脱ぐ。
既に裸のリカはフラフラ一人浴室に消えていった。