DOLLHOUSEU 1-2
「釘をさされちゃいるけど。俺、結局ここで梶のボンに会ったことねえよな。…ちょっとお嬢に挨拶してみっか」
「だめよっ」
私は立ち上がって男に駆け寄った。
「なんだよ?別に処女って訳でもねえだろ?バレやしねえって」
「あの子はやめて。するなら私にして」
こんなことが私の口から出るなんて。でも、リカちゃんの替わりならかまわない。
あの子の泣き顔を見たくない。
「なんだ、ヤキモチか?おめえはまた今度だ、さっき入れてやったろ?」
男はへらへらと嗤って、はだけている乳房を揉んだ。
「う」
そんな事に構っている場合じゃない。
私は男に組み付き階段を昇るのを阻止した。
「邪魔なんだよ」
男は私を階段から突き落とした。上っていた5段ほどを転がり落ちた。
体中を打ち付けたが、男の後を追う。
痛みは確かにあった。でも、そんなことどうでもよかった。
這うようにそれでも急いで、階段を上った。
「へえ。美人じゃんか。華奢なのがそそるねえ」
男はリカちゃんの部屋に入っていた。
私は背後から再び男に組み付いた。
「ユリさんっ!」
「早く逃げてっ!」
逃げるとこなんかない。でも森の中でいい。男があきらめるまで隠れられたら。
梶のぼっちゃんに言えば、この男の仕事(或いは人生)は終わる。
が、リカちゃんが逃げられなかったら、たぶん梶のぼっちゃんには言い出せなくなる。
「ユリさんっ!」
私達のいる場所が扉に近すぎてリカちゃんが部屋からでられない。
「邪魔だって言ってるだろ」
「うぐっ!」
払いのけられ、蹴られ、壁に向かって身体が浮いた。
そして。
私は意識を失った。