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カコミライ
【大人 恋愛小説】

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カコミライ (4)今の私-1

‘狡くて、バカで、やな女だったのは誰?’



 携帯電話とにらめっこを始めてから既に小一時間。手元には、この間美嘉さんから受け取った連絡先の書かれた紙。
 先日散々話したのだから大丈夫だと自分に言い聞かせるも、中々最後の番号が押せなくて。
 美嘉さんにとっては私は元彼の妹で。なのに海と寝ていて。……と、そんなことばかり考えていれば、緊張してしまうのは当たり前なのだろうけれど。



『もしもし?』

 意を決して発信ボタンを押すと、数秒して耳に届いた声の穏やかさに安堵する。

「もしもし、古来ですけど」

『あ、待ってたのよ電話。私番号間違えて書いちゃってるんじゃないかと心配してたところなのよ』

 美嘉さんのあっけらかんとした応対に、私の緊張は波がひいたように去っていった。
 話す内容はこの間のことから始まり、やがて脱線してしまう。思い出したようにチーズケーキの感想を求められ、私は口を濁してしまった。

『もしかしてチーズケーキ嫌いなの?』

「いえ、そんなことは……」

 あの時は頭が一杯で、混乱状態だった所為か味がしなかったんです、なんて言えない。言葉に窮したまま、この場を上手く凌ぐ方法を探していると、

『じゃあ、また食べに行かない?その時に改めて』

 嬉々とした口調で誘われた。
 また会おうと約束していたし、まだ訊きたいこともある。断る理由はなかった。

「いいですよ」

『なら決まりね』

「あの、それと一つお願いがあるんです」

『いいわよ?』

「その時に少し時間をズラして、海を―――……


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