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月夜にあなたを想うこと
【片思い 恋愛小説】

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バレンタインデー-3




「何かあったの」

暫く、部屋でぼんやりとしていたが、お風呂に入るために階段を下りた。
ダイニングでトマトジュースを並々と注いでいた母に聞かれる。

「雅成が、捨てられた子犬みたににしょぼくれて出てったわよ」

私は生返事を返した。

「おやじだけど、天然なんだから、適当に許してあげなさいよ」

だって、と私は言い訳をする。
お風呂に行く気が失せて、ダイニングのテーブルに腰掛けた。

「大きくなったら、無条件で雅成くんと結婚できると思ってた」

ぶはっ。
母が勢い良く、トマトジュースを吹き出した。
…顎に滴る赤い液体は喀血したように、みえる。

「ちょっと。飲んでるときに笑わせないでよ

笑わせるつもりなんて、なかったのに。
私は、憮然として顎を突き出してテーブルに載せる。

「…いつになったら、大人なの。あと何年したら、雅成くんは私を異性としてみてくれるんだろう。…あとどれくらい待ったらいいの」

母はちょっと目を見張って、トマトジュースを丁寧に拭き取ると、私の向かいに腰掛けた。

「なに、焦ってるのよ。雅成が結婚してるわけじゃなし。あんた、どれだけ雅成と一緒にいると思ってるのよ。まだ自暴自棄になるのは早いんじゃないの」

母の慰めに乗らず、更に不貞腐れて私は呟いた。

「……この前、女の人と歩いてた」

「うそっ。どんな人、どんな人?」

瞳を輝かせて、母が前のめりになって尋ねる。
俄然興味をひかれたようだ。

「…なんか、大人の綺麗なお姉さん」

「やるな。雅成のくせに」
自分の放った言葉にますます不貞腐れる。
なんで、こんな年の差に生まれたんだろ。

私の様子を面白そうに眺めて、母は言った。

「じゃあさ、背伸びしてみる?もうすぐバレンタインデーだしさ」

片手に何やら紙切れをヒラヒラさせている。

「賢治と行こうと思ってたんだけどさー。あんたにあげる。雅成と行っといで」

渡されたのは、フレンチのディナー券。

「知り合いのお店がリニューアルオープンするらしくてね。ちょっと頑張ってお洒落して、あの唐変木をめろめろにしたげなさい」

などと宣っては、私に片目を瞑ってみせる。

「……めろめろ…」

死後に怯みながらも、私は“唐変木めろめろ作戦@バレンタインデー”について、母に重ねて助言を請うた。
頼りになるは人生の先輩。
……少しくらいバブルの名残のニオイがしても、そこは大目にみるのだ。


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