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バンパイヤ
【大人 恋愛小説】

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バンパイヤ-1

「あなた!」

妻と買い物へ向かっていた。交差点を横断中だった。
けたたましいクラクションが聞こえてくると同時に、僕は妻に突き飛ばされた。
それはもの凄い力だった。僕は、隣にいた女性にぶつかりながらも数メートル先の路上まで飛ばされていた。次の瞬間だった。大型トラックが交差点に突っ込んできたのだ。僕の目は妻を追っていた。僕を突き飛ばした妻は、優しく微笑んでいるように見えた。そして突っ込んできたトラックが妻にぶつかり・・・・・・

「卑弥呼!」

僕は、夢中で立ち上がると妻の元へ走り出した。トラックの先、数メートルのところに、妻のコートが見えた。その時だった。妻がむくりと起き上がり、僕を見つけて手を振ったのだ。周りは騒然としていた、他にも巻き込まれた人がいたのだろうか。いくつかの悲鳴が上っていた。妻は何事もなかったように立ち上がり、駆け寄る僕に言ったのだ。

「あなた。怪我はなかった?」
「怪我って、君こそすぐに病院へ行かなきゃだめだよ!」
「私は、大丈夫なのよ。ここにいると煩いわ。早く行きましょ。」
「そんな、ダメだよ。君はトラックに・・・・」

妻は、僕の口を押さえると、僕の腕を取って進み始めた。

「話しは後よ・・・・・」

妻は、さっさと車に戻り助手席に乗り込んだ。僕は、頭の整理が出来ないまま、妻に即され車を走らせた。

「何を、そんなに慌てているの?」
「慌てるだろう? そんなことより病院へ、僕は本当に心配しているんだ!」
「私は、何ともないのよ。見て分からない?」

僕は、妻にトラックがぶつかる瞬間を思い出した。身の毛もよだつ光景だった。妻は、壊れた人形のように飛ばされていったのだ。しかし、信じられないことに、妻は擦り傷一つ負っていない。

「もう、隠せないかしら。
 本当のことを言うとね、私、不死身なのよ。バンパイヤなの。」
「こんな時に、冗談はよしてくれ。」
「本当なのよ。」

そう言うと、妻はナイフを取り出し、本当に美しい妻の腕を引き裂いた。

「よ、止すんだ!!!」

僕は、あまりの出来事に急ブレーキで車を止めた。そして、妻の手を取ると恐るべき光景を目の当たりにしたのだ。切り裂かれた傷口が見る間に塞がり、元通りの真っ白な肌が戻っていた。

「君は、本当に・・・・・」
「驚かないで、取って食べたりしないから。」
「・・・・・・・」

僕の思考は、完全に停止していた。頭が混乱するとは、こんな状態なのだろうと冷静に考えたりもしていた。僕の中で、思考より先に妻への思いが動き出した。

「それで君は、この先も僕の傍に居てくれるのかい?」
「最初の言葉が、その言葉で嬉しいわ。」
「あなたが良ければ、そうするわ。」
「それなら僕は、君がバンパイヤでも構わない。」

僕は、それだけ話すと車を走らせた。僕の混乱は収まっていなかった。
言葉が出ない僕に、妻の方から声を掛けてきた。


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